ダウジングにて
「宝探しって、憧れるよな」
山道を歩くチナが言った。
「……宝そのものがじゃなくて?」
隣を歩くプラが言った。
「はぁ……これだから現実主義者は。ロマンって奴が分かってないねぇ」
「ロマンじゃ飯は食えないわよ」
「冷めた奴だな。まるでこの鉄の棒のような……おや? こんなところにダウジング棒が!」
そう言うとチナはふところからわざとらしく二本のL字の鉄棒を取り出した。
「……」
「……」
「……おや? こんなところにダウジング棒が!」
「いやいや、二度もやらなくていいわよ。分かったから」
「こっちこそいやいや、分かったのならもうちょっと乗っかって来てくれよ。恥ずかしいじゃんか」
「そんな胡散臭いもの買ってる時点で十分に恥ずかしいわよ。何? そんなもので宝を見つけようってわけ?」
「うん」
「うわっ、一片の曇りもない真っ直ぐな返事。こりゃあどうしようもないわ。やらせてみて痛い目見てもらう他なさそうね」
「やる前から失敗するって決めつけるなかれ。宝の分け前あげないぞ?」
「……」
「……」
「……それは困るわ」
「……現金な奴だな」
二人は近くの岩場へと入って行った。
「あれーっ、おかしいなー。全然反応がないや」
鉄棒を手にしながら岩場を歩くチナが言った。
「ほらみたこと、所詮、そんな棒切れで宝探しなんて、夢物語にすぎないのよ」
プラが言った。
「くそぅ、我が夢はうたかたのごとく空に消えゆく定めなの……ん?」
「どうしたの? フェイントならいらないわよ」
「いやいや、なんだこの大きな反応は……間違いない、この棒の指し示す先に宝がある!」
すると二本の鉄棒の先端はプラを指し示した。
「……え? 私?」
「……そうか、そういうことか」
「いや、どういうことよ」
「宝の正体は……共に旅するかけがえのない仲間のことだったんだよ!」
「うん、ごめん。全然、意味わかんない」
「ちぇっ、つまらん奴だな。せっかくいいこと言ったってのに」
「どこがよ。反応があったのは私の背後の岩場でしょ。バカ言ってないでとっととその宝を掘り起こしましょう」
「……さっきとは打って変わってやる気じゃないか。夢物語だなんだの言っていたのはどこの誰だったかな?」
「別に、本当に宝があるなら、それに越したことはないってだけよ」
「……本当に現金な奴だな。まあ、いいけど」
二人は力を合わせて、反応のあった場所を掘り起こした。
すると、そこから黄金に輝く石が見つかったのだった。
「……やだ、本当に見つかっちゃった」
若干引き気味のプラが言った。
「……ああ、いざ見つけると喜びより動揺が先に来るな」
同じく引き気味のチナが言った。
「……で、どうするの?」
「どうするって……鑑定所に持っていくしかないだろう。このままじゃ漬け物石くらいにしか使い道がないし」
「そ、そうね。行きましょう」
二人は町に引き返し、鑑定所に向かった。
「……」
「……」
「……一銭にもならなかったね、この石」
鑑定所から出たチナが重い口を開いた。
「……そうね」
大きく肩を落としたプラが言った。
「いやいや、いくら何でも落ち込みすぎでしょ。前向きに考えようぜ。綺麗な漬け物石が手に入ってラッキー! って」
「……そりゃ落ち込みたくなるわよ。一銭にもならなかったのよ。これじゃあパンの一つも買えないわ……というか、私達、漬け物なんて作ってないし」
「そりゃそうか……まあ、でもアタシは今回のことで気づいたよ。どこからか見つけ出すまでもなく、アタシはすでに宝を手にしていたんだ……プラ、お前という名の仲間という宝をね」
「ああ、そう」
「……」
チナも大きく肩を落とした。