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プラとチナの二人旅  作者: ジョン
32/70

ポエムを綴って

「うーむ……」


林道を歩くチナが唸った。


「どうしたの? 天然記念物並みに珍しく難しい顔しちゃって」


プラが尋ねた。


「常時、簡単な顔をしているかのような言い方は止めてくれ。アタシだって色々と考えて生きている生物のひとつだぞ」


「あっそう。それでその生物は今、何を考えているというのかしら?」


「うむ、よい質問だ。何を隠そうアタシは今、趣味のポエムを書いているのだ」


「……」


「……何だその臭い物でも見るかのような顔は」


「……さて、どこから手をつけようかしら……そうねぇ、そもそもあなたに趣味なんてあった? 食って寝るだけの毎日じやないの?」


「……ストレートに失礼な奴だな。アタシにだって趣味のひとつやふたつはあるさ……始めたのは今日からだけどな」


「即席じゃないのよ。日が浅すぎるわ、それじゃあまだ趣味とは言い張れないわよ」


「いいじゃないか。趣味に時間は関係ない。自らが楽しめている時点でそれは趣味になりうるのさ」


「にしても浅すぎるでしょうよ。趣味を名乗るのなら、せめて作品のひとつでも披露してみせてからにして頂戴」


「まったく、欲しがりさんだな。じゃあ……こんなんでどうだ?」


そう言うとチナはプラに何かを記載した紙を差し出した。


「超即興ね。さっきまで悩んでたのはどこいったのよ……どれどれ……」


プラが受け取った紙にはこう書かれていた。




"ポエムって 何書けば いいんだろう? "




「……何これ?」


プラが尋ねた。


「ポエム」


チナが答えた。


「どこがよ! ただ、今のあんたの気持ちを書いただけじゃないのよ!」


「そうだよ。今の自分の気持ちを文章にして見たんだよ。この読者に問いかける感じ、中々イカすだろ?」


「知らんわ! 自分で考えろ! ……私もポエムの定義はいまいち分からないけど、これがポエムじゃないことは確かよ」


「ポエムに定義なんてないんだよ。自分がポエムと思ったらそれがポエムになりうるのさ」


「今日のあんたそればっかりね。何? 気に入ったのその構文?」


「ああ、プラも使う?」


「絶対使うもんですか!」


「なんだ、つまらん……ん?」


二人は足を止めた。


それもそのはず、二人の目の前に満開の桜並木が現れたからだ。


「おお、ここが地図にあった桜の名所か、綺麗だなぁ」


チナが言った。


「ええ、ホントに。風流ね」


プラが言った。


「……ちょっと待て」


「何よ?」


「聞き逃す所だったが、風流ってなんだ?」


「さあ? 特に定義なんてないわよ。自分が風流と思ったら、それが風流になりうるのよ」


「……」


「……」


「……やっぱり気に入ってんじゃん、その構文」


「……う、うるさい!」


プラの頬も桜色に染まった。

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