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プラとチナの二人旅  作者: ジョン
31/70

遠距離攻撃を身につけて

「なぁ、プラ」


森の中を歩くチナが言った。


「何よ、チナ」


同じく森の中を歩くプラが言った。


「アタシ、気づいちゃったみたいだ。アナシらに足りないものが何なのかを」


「毎度のことながら急ね。してそれは何なのかしら?」


「いいか、心して聞けよ。それはだな」


「それは?」


「ズバリ! 遠距離攻撃だよ!」


「……」


「……」


「……今日もいい天気ね」


「そうだな……っておい!」


「何よ?」


「何よじゃない! 会話をなかったことにするんじゃないよ!」


「なかったことにもしたくなるわよ、そんな素っ頓狂な話題振られたら」


「どこが素っ頓狂だ! 緻密な考察から導き出された、的確な回答だ!」


「考察って……そもそも私達には近距離だ遠距離だ以前に、攻撃手段の一つもないのよ」


「そうだっけ?」


「そうよ。あんた、私達が持つ攻撃手段は何でしょうって、問題振られて、何か答えられるとでもいうの?」


「……」


「……」


「……物を投げつける」


「わお、動物並みの回答」


「人間だって動物だ」


「おバカ、屁理屈言ってないの」


「ううっ……お前の言う通りだ私達には攻撃手段が存在しない」


「分かればいいのよ……って、それってこの世界においてかなりの死活問題だと思うのだけど」


「そうだな。いい機会だ、ここらで遠距離攻撃の一つでもサクッとマスターしちゃおうぜ」


「軽く言ってくれるわね、何か宛があるの?」


「そうだな、手頃なのだと……」


そう言うとチナは近くの茂みを探り始めた。


「……手頃とか言ってる時点で、やる気ないのが見え見えなんだけど」


プラが言った。


「んなこたぁない、やる気満々だよ……まあ、これでいいか」


そう言うとチナは茂みの中からY字の木の枝を拾い上げた。


「……妥協満々のセリフはスルーするとして、その枝をそうする訳?」


プラが尋ねた。


「簡単さ、これにゴムを巻き付けて、そこに木の実かなんかを引っ掛けて飛ばすんだ」


チナが答えた。


「本当に簡単ね。そんなものが攻撃手段として成立するのかしら?」


「百聞は一見に如かず。まあ見ててよ」


そう言うとチナは作成した道具に硬い木の実を取り付けた。


「せいっ!」


チナの握った道具から木の実が放たれた。


そしてそれは、偶然近くを通りがかった魔物に命中した。


「しまった! 試し撃ちのつもりだったのに!」


チナが言った。


そして、当然のことながら魔物は二人に対して攻撃態勢に入った。


「……完全に怒らせちゃったようね。どうするのよ?」


プラが言った。


「……さあ、どうしよう?」


「まったく……こうするのよ!」


そう言うとプラはチナから先程の道具を取り上げ、それを使って足元にあった赤く熟した木の実を魔物の遥か後方に向けて発射した。


そして、魔物はその赤く熟した木の実に心を奪われたのか、飛ばされた赤い木の実を追いかけて森の中へと姿を消した。


「……おお、流石プラ先生、見事なお手前で」


チナが言った。


「まったく……これにこりたら二度と私達に足りないものは遠距離攻撃だ、なんて言い出さないことね」


プラが言った。


「肝に銘じておきます」


「よろしい……まあ、それは別として」


「何だ?」


「この道具は気に入ったから、今後も私の武器としても使わせていただくわ」


「ああ! ずるい! アタシが作った奴だぞ!」


「どうせあんたじゃ使いこなせないでしょ。宝の持ち腐れよ」


「うぐぐ」


こうして二人の旅に心強い味方が加わった……ように見えたが、数日後にプラが飽きたと言って、焚火の燃料にしたのだった。

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