武器を求めて
「うわぁ! こいつは!」
チナが言った。
彼女の周囲にはコウモリの姿をした魔物が羽ばたいていた。
「こいつは厄介ね……チナ! いつもの行くわよ!」
プラが叫んだ。
「了解! それじゃあ十八番の!」
「逃走!」
二人は全速力で洞窟から抜け出した。
「はぁ、はぁ。いやぁ参った参った。まさか魔物が潜んでいたとは」
「ホントよね。ここを抜けないと次の街に行けないっていうのに」
「なあプラ。アタシ思うんだけどさ」
「何よ?」
「いい加減、なんか武器を買おうぜ」
「……」
「プラ!」
「分かった分かった、買うわよ買えばいいんでしょ……所持金カツカツだけど」
「命あっての物種だ。武器の購入を渋って魔物にやられちゃ世話がない。先に進む為には武器の所持は必要不可欠だ」
「うっ、あんたにしては正論中の正論ね」
「アタシの発言は常に一言一句正論でできているが?」
「そんなわけないないでしょ」
「そうだな、言い過ぎた」
「まあでもあんたの言う通りね。引き返して街の武器屋に寄りましょう」
「おう」
そして二人は武器屋へとやってきた。
「ほぉ、いろんな武器があるな」
「……すっごい平凡なコメントかますわね。武器屋なんだから当り前でしょう」
「ナンセンスですまん」
「いいわよ。それより各々に合いそうな武器を選びましょう」
「オーケー」
数分後。
「というわけでそれぞれ気に入った武器を買った……はずなんだけど」
「何だ?」
「……あんたの買ったその鎧は何?」
「あーあれだ。な、なんたらメイルやつだよ」
「なんで武器買おうっていったのに防具買ってんのよ。まさかぬいで投げつけるとかいうんじゃないでしょうね」
「いやいや、そんな使い方はせんよ。ほら、攻撃は最大の防御って言うだろう? 逆もまたしかりというやつさ」
「いや、初めて聞いたけど。というかむしろそんなの着てたら動きづらいでしょうが」
「そうでもないさ。まあ、結構頑丈だし、いざとなったら投げつけたりできる」
「やっぱり投げつけるんじゃないの!」
「そういうお前の買った奴こそなんだよ、その曲がった鉄棒は?」
「これはバールっていうのよ。武器としても使えるのは勿論、緊急時に物を破壊するのにも使えるわ」
「……明らかに後者の用途が理由で選んだだろ?」
「そんなわけないわよ。使い道が多い事に越したことはないでしょ?」
「そうかぁ? まあ、机上の空論はこれくらいにして、実践しに実戦に赴こうじゃないか!」
「そうね」
(……スルーされた!)
二人は再び先程の洞窟へとやって来た。
そして例のごとくコウモリの魔物との戦闘になった。
「さて! 行くか!」
明らかに動きづらそうな鎧をまとったチナが言った。
「……その体たらくで何をどうしようっていうのよ」
バールを手にしたプラが言った。
「そういうお前こそ、その鉄棒はお飾りか?」
「うっ、だってこの程度のリーチしかない武器で魔物に挑むの怖いんだもの」
「なんだよそれ! 二人そろってなんて様だ!」
「さりげなく自虐してるし……もう分かったわ、これじゃあ埒が明かない。その鎧ぬいで渡しなさい」
「なんだよ、投げつけるのか?」
「違うわよ。いいから渡しなさい」
そう言うとプラはチナから受け取った鎧を、手にしたバールで叩き始めた。
その轟音に恐れをなした魔物は二人の前から姿を消した。
「おお、これぞ戦わずして勝つというものか」
「馬鹿と鋏は使いよう。鎧もバールもまたしかりってね」
「……それ、格好付けたつもりか?」
「いいんじゃない、たまには」
「それもそうか」
二人は再び洞窟を進み始めた。