体重を気にして
「なあプラ、聞いてもいいか?」
チナが言った。
「……私に答えられることならどうぞ」
プラが言った。
「最近……アタシ太ったか?」
「……」
「……」
「……うん」
「くーっ! やっぱりか、やっぱりそうなのか?」
「ええ、残酷だけどこれが現実よ」
「なんて心無い現実なんだ! アタシは信じないぞ、こんな現実!」
「チナ、前に進む為には現実を受け入れるしかないのよ。ちょうどそこにシーソーがあるわ。あたしと一緒に乗って、その目で現実を確かめなさい」
「なんでこんなところに都合よくシーソーが?」
「さあ、神様の粋な計らいじゃない?」
「ぐっ、神でさえもアタシに牙をむくというのか!」
「あんた何様よ。いいからシーソーの片端に乗りなさい」
二人はシーソーの両端にそれぞれ座った。シーソーは地面と平行になった。
「……」
「……」
「……プラ」
「ああもう分かってるわよ! 皆まで言うな! 私もこの残酷な現実を受け入れるわよ!」
「お、おう。なんかすまんな、アタシの巻き添えで知られざる真実を知る羽目になって」
「い、いずれは知ることになる真実よ。それよりこの現実に立ち向かう術を考えましょう」
「つまりダイエットって訳か。しかし妙だな」
「この期に及んで何がよ?」
「だってアタシら毎日のように歩き続けているだろう? 運動は十分行っているはずなんだがな」
「確かにそうね……あっ! あれよパン! 最近、パンばっか食べてたせいじゃないの?」
「それで太るもんかなぁ? まあ、太ってしまったものは仕方ない。潔くダイエットに勤しむとしよう」
「そうね。食事に気を使うことは当然として、運動はどうしましょう?」
「こうしないか? 今まで歩いてたのを走るようにするってのは」
「いいわね、それだけでも大分違うと思うわ」
「よし、決まり! そうと決まれば早速走ろう!」
「ちょっと、準備体操を忘れるんじゃないわよ」
「おっとそうだった」
そして一週間後。
「ふぅ、今日も大分走ったな」
チナが言った。
「ええ。進む距離も稼げるし一石二鳥ね」
プラが言った。
「いやいや、よく動いた後の飯は一段と上手く感じるから一石三鳥さ」
「訂正。共通の趣味が持てるようになって、以前より会話も弾むようになったし、一石四鳥よ」
「ははは、流石にそこまで来ると鳥が可哀想になってくるな。さてそれじゃあこの一週間の成果を確かめてみるとするか。そこにシーソーがあることだし」
「相変わらず都合がいいわね。まあいいわ、乗ってみましょう」
二人はシーソーの両端にそれぞれ座った。
シーソーは地面と平行になった。
「……ええと」
「……これは一体」
「いい方向に考えれば二人とも痩せた。悪い方向に考えれば二人とも太ったままってことね」
「というか二人一緒にダイエットしたら意味ないのでは?」
「そもそも以前乗った時に、あんたが太ってたかどうかも不明瞭ね」
「……」
「……」
「……ダイエット続けるか」
「……そ、そうね」
そう言うと二人は仲良く夕日に向かって走り出した。