紙ヒコーキを飛ばして
「例の如く暇だな」
昼食を終えたチナが言った。
「暇をもて余すのもなさないのも本人次第よ」
同じく昼食を終えたプラが言った。
「アタシにこの暇をどうにかする方法を見いだせと?」
「そう聞こえなかったかしら?」
「ふむぅ、そうだな。せっかく時間が出来たんだ明日の為の体力作りに勤しむのはどうだろうか?」
「……お手本をどうぞ」
「よし来た!」
そう言うとチナは立ち上がり準備体操を始めた。
「いっち、に」
「……」
「さん……」
「……」
「駄目だ疲れた」
「早っ! まだ準備体操じゃないの!」
「駄目だやめやめ。だいたいついさっきまで歩きっぱなしだったのに、なんでわざわざ体を動かさんとならんのだ」
「知らないわよあんたがやるって言い出したんでしょうが」
「とにかく、体を動かすのはなしだもっとこう静の暇潰しを考えよう」
「具体的にどんな?」
「そうだな……」
そう言うとチナは食べ終えたパンの包み紙をいじり始めた。
「急に静に徹し始めたわね。何作ってんの?」
「おいおい、この世で私が紙で折れる物なんざひとつしかないぞ」
「それ誇らしげに言うことかしら……ってそれは」
「ああ、紙ジェッ……紙ヒコーキだ!」
「なんでちょっと格好つけようとしたのよ」
「う、うるさいな! 別にいいじゃないか!」
「確かに別にいいけど、そいつをどうするの?」
「どうするって、こうする以外ないだろう」
そう言うことチナは紙ヒコーキを投げた。
「……」
「……」
「……これ、楽しい?」
「い、一個だけじゃ楽しいはずないだろ! お前も折るんだよ!」
「……仕方ないわね」
数分後。
「ふぅ、なんとか折れたわね」
プラが汗をぬぐいながら言った。
「プラお前……折り紙下手くそだな」
チナが言った。
「う、うるさいわね! あなたよりレパートリーは多いもの! 質より量よ!」
「そうかい。ま、その程度のクオリティの物じゃ、アタシのには勝てないだろうけどね」
「いってくれるじゃないの。いいわ、勝負と行きましょう。あんたのその質とやらも否定してやるわ」
「上等だ。ルールは簡単。遠くまで飛んだ方の勝ちだ。いいな? 」
「ええ」
「それじゃあ……ちょっと待て」
「何よ」
「お前の紙ヒコーキやけにでかくないか?」
「そう、目の錯覚でしょ」
「どんな錯覚だよ! 明らかにでかいだろ!」
「大きさなんてどうでもいいじゃないの、肝心なのは遠くまで飛ぶかどうかよ」
「ぐっ、それもそうか……それじゃあ、行くぞ!」
「はいよ」
二人は同時に紙ヒコーキを投げた。
しかし、二つの紙ヒコーキは風にさらわれ、仲良く池に落下した。
「い、池ポチャ……」
「……」
「こいつは引き分けだな、もう紙もないし……って、どうしたんだ?」
「……いや、私の紙ヒコーキ……地図を使って作ったんだけど」
「……」
「……」
「……何やってんだぁ!!」
二人はしばらくの間、地図を求めて池で水遊びをする羽目になった。