クイズを出して
「突然だが、クイズタイムだ。用意はいいか?」
チナが言った。
「上等じゃないの、かかって来なさい」
プラが言った。
「オーケー。それじゃあ……パンはパンでも食べられないパンってなーんだ?」
「……」
「……」
「……」
「……おいプラ」
「何よ?」
「お前、フライパン以外でひねりのある答えを出そうとしているだろ?」
「よくわかったわね。あんたエスパー?」
「この程度でエスパー呼びされちゃあ、この世の人のほとんどがエスパーさ」
「それはなんとも息の詰まる世界ね」
「いやいや口を閉じた所でエスパーはお見通しさ……じゃなくてだな」
「変な意地張らないで、潔くフライパンと答えろ、でしょ」
「分かっているなら、そうしてくれよ」
「嫌よ、そんなありきたりな答えじゃ、面白くないもの」
「あのなぁ、これはクイズなんだぜ。答えが面白い、面白くないは関係ないだろ」
「関係あるわよ。人生を謳歌するのに必要なことは、いかに物事を面白くできるかだもの」
「また、わけの分からんことを。じゃあ、いいよ。好きなだけ考えてくれ」
「最初からそのつもりよ」
10分後。
「ふぁあ、退屈だなぁ。なぁ、そろそろ抱腹絶倒大爆笑の超面白回答は思いついたかよ」
「……ここぞとばかりにハードルを上げてくるわね。まあいいわ、それなりの物は思い付いたことだし」
「おっ、聞かせていただこうじゃないか」
「いいわよ、あんたも腹を抑える準備はいいかしら?」
「こやつめ、己でさらにハードルを……よいだろう、かかってこい!」
「いくわよ! パンはパンでも食べられないパン! それは!」
「ごくり!」
「く、腐ったパン!」
「くうううう! つまんねぇえええええ!」
チナの咆哮が森にこだました。
「……」
「な、なあ元気出してくれよ。たかがクイズじゃないか」
「たかがクイズされどクイズよ。私はそのクイズで面白い回答を導き出せなかったつまらない人間よ」
「いや、だからクイズの回答に面白さは関係ないんだって……」
「……」
「……」
「……」
「あーもう、分かった分かったよ! リベンジマッチと行こうじゃないか!」
「リベンジマッチ?」
「ああ、これからもう一問アタシがクイズを出す! そのクイズの回答で見事アタシを笑顔にしてみせろ!」
「チナ……分かったわ、受けて立とうじゃないの!」
「へへ、そうこなくっちゃ。じゃあ問題だ!」
そう言うとチナはバッグから一個のパンを取り出した。
「パンはパンでもこの世で一番上手いパンってなーんだ?」
「……ふふ、簡単じゃない」
「答えをどうぞ!」
「誰かと分け合うパン、でしょ」
「……正解!」
チナは満面の笑みでそう言った。
そして二人は世界で一番上手いパンを堪能した。