薬草探しにて
「う、うぐぐぐ」
チナが足を押さえながら言った。
「っ!? どうしたのチナ!? まさかケガを? さっきの魔物との戦闘(もちろん逃げたけど)で!」
血相を変えたプラはチナに駆け寄った。
「いや、違う!」
「えっ! じゃあ何で!」
「……」
「……」
「……さっきそこで転んで足を打ったんだ」
「ずこーっ!」
プラはその場でずっこけた。
「おいおい、お前まで転んでどうするんだ。ケガ人をこれ以上増やすんじゃない」
チナが冷や汗を浮かべながら言った。
「……転びたくもなるわよ。戦闘で名誉の負傷をしたかと思えばこの様なんだもの」
プラがひざをはらいながら言った。
「負傷の前にさっきの戦闘が名誉あるものだとは到底おもえんがな……あだだだ」
「ま、名誉があるにせよないにせよ、ケガはケガだわ。待ってなさい。今、薬草から薬を作ってあげる」
「プラ……へへ、恩に着るぜ」
「着なくていいわよこんぐらい。ええと、確かバッグに余りの薬草があったはず……」
プラは背中のバッグを下ろすと、その中をあさり始めた。
「……」
「……」
「……どうした?」
「……ごめん、ないわ」
「えっ、そんな!」
「どうやら、昨日の夕飯のカレーに香辛料と間違えて入れちゃったみたい」
「うおい! ショックにショック重ねんなよ! 知らずに食べちゃったじゃないか!」
「私も食べたけど。まあ、二人共ご存命だし、それについては大丈夫でしょ」
「うえー、何か足より腹が痛くなってきたぞ」
「気のせい、気のせい。じゃあ、ちょっと香辛料……じゃなっかた、薬草探してくるわね」
「ああ、間違えて香辛料採ってくるなよな」
プラはすぐそばの森の中へと入っていった。
数分後。
「おっ、戻って来たか。あったか?」
チナが尋ねた。
「ごめん、なかったわ」
「おいおい、またかよぉ! またカレーにぶち込んだんじゃねぇだろうな!」
「んなわけないでしょうが! この森の品揃えが悪いのがいけないのよ」
「なんだよ森の品揃えって、アタシの脚どうすんだよ?」
「この際、背に腹は代えられないわ。足出して、ツバつけるから」
「おばあちゃんかよ! つーか、何でお前のツバ? やるなら自分でやるよ!」
「それじゃあ、アタシがただの役立たずで終わっちゃうじゃないのよ! そんなの御免だわ! せめて私自身があんたの薬になる!」
「やめろ気持ち悪い! お巡りさーん! 助けてー!」
「ああっ、逃げるな! 待ちなさーい! てか普通に走れてるじゃないのよ!」
二人はそのままふもとの町まで仲良く全力疾走した。




