表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プラとチナの二人旅  作者: ジョン
10/70

橋の前にて

「これは、はたまた」


「いかがなものか」


プラとチナが言った。


山道を進む彼女達の目の前に、二本の橋が現れた。


「右の橋は絵に描いたような丸太とロープで組まれた吊り橋ね」


「片や左の橋は石材で作られた頑丈そうな石橋だ」


「……刹那も悩む時間は必要ないわね。当然、私達が選ぶのは」


「ああ、右の吊り橋だ」


「……」


「ん? どうした?」


「今のボケ、30点よ」


「ほう、及第点と言ったところか……じゃない! なにアタシの発言をボケ扱いしているのだ!」


「え、本気で言ったってこと?」


「絵に描いたような引き顔をするんじゃない! 本気も本気だ、大真面目だ!」


「……あのねぇ、この状況で吊り橋選ぶ人なんてウケ狙いの大道芸人ぐらいよ。もしかしてあなた芸人さん?」


「断じて違う」


「ならどうして吊り橋を選ぶというのかしら?」


「ちちち、プラくん君はもう少し語学を学ぶことだ。石橋を叩いて渡るという言葉を知らないのか?」


「存じているけど、それがなんの関係があるのよ?」


「言葉は通りさ。石橋は叩きながら渡らないといけないんだ。だが、そんなことをしていたら日が暮れてしまう。それじゃあ今夜の宿はお預けだ。ここはとっとと吊り橋を渡ってしまった方がいい」


「あきれた、勉強不足はあなたの方ね。急いては事を仕損じると言う言葉を知らないの。焦って危険な橋を渡って落ちたらどうするのよ? というか、石橋を実際に叩きながら渡る必要はないのよ」


「そうなのか?」


「そうなのよ」


「じゃあ、石橋を行こう」


「随分と切り替えの早い。もっとこう、意地とかはないわけ?」


「意地もテントも張る気はないよ。今日こそはフカフカのベッドで夢を見るんだ」


「まったく、面の皮の厚い。まあいいわ、行きましょう」


そう言って、プラが石橋に片足をかけた次の瞬間、轟音と共に石橋は崩れ落ちた。


「……」


「……」


「……プラさん。明日からは食事制限を心がけた方がよいかと」


「私の体重のせいで落ちたわけないでしょう! 橋がボロボロだったのよ!」


「現実とは残酷なものだ。受け入れ難いのも無理はない」


「だから違うって!」


二人はいがみ合いながらも残った吊り橋の方を渡りきった。


「ふぅ、なんとか生きたまま橋を渡りきったわね」


「ああ、吊り橋とは存外丈夫なものなのだな」


「そうね、ひとつ賢くなったわ」


「おいおい、賢くなったのはひとつではないであろう」


「……」


「……」


「……はぁ、わかったわよ。「石橋は叩いて渡れ」でしょ、肝に命じておくわ」


「素直でよろしい! それじゃあ先に進むとしよう。足元とそれから、体重にも気をつけながらな」


「だから違うっつーの!」


プラの怒号が吊り橋を揺らした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ