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ちょっと変な国語の先生の話

珍問珍答シリーズ その14 「死を意識した時のこと」

作者: マボロショ

「人は、死を意識した時、すべてのものの美しさがわかり始める」という趣旨の文章について学習活動の後、次のような問題を出してみました。


「他の人の死」にぶつかって、あるいは、「自分の死」にぶつかりそうになって、あなたが、今までに、一番強く死を意識した時のことを、くわしく説明しなさい。


この問題に対する解答の例を、いくつか紹介します。


3年生の、男子8人、他は全部女子、というクラスでの、試みでした。

いとこの車の横に乗っている時、もう少しで、私がわのドアに、タクシーがぶつかりそうになった。心臓がドキドキして、いっとき、とまらなかった。

それから、車の免許をとるのをやめめようか、とも思った。けど、免許をとっとかないと。将来こまるだろうと思い、けっきょく、とることにした。


祖父が病気で倒れ、もうダメだと言われたことがあります。家族も、それなりの覚悟をしていました。私も、祖父にかわいがられていたため、人の死というものを、とても大きく意識しました。

しかし、祖父は、戦争の時代を生き抜いて来た人で、病院の先生方もおどろくほど、元気をとりもどしました。回復した祖父は、今は、自宅で暮らしています。

今まで、どこの誰が倒れたとか、亡くなったとか聞いても、実感としては、なにもわからなかったけれど、自分をかわいがってくれた人とか、やさしくしてくれた人に対しては、「もう一度元気になって」と、心の底から言いたくなります。


私が、今までで一番強く死を意識したのは、たぶん、ひいおばあちゃん(母の祖母)が亡くなった時だと思います。しつけとかに、すごく厳しい人だったけれど、それ以外の時は、すごく優しい人で、………………

でも、あんなに元気だったのに、……………。

おかんに入れられている姿を見ると、なんだかものすごく小さく見えて、あれだけ活発に歩きまわっていたのに、と不思議でした。ただ目をとじて眠っているだけのような気がしてなりません。うれしそうにも、幸せそうにも見えました。

ああ、私もいつか、こんなふうになってしまうんだ、私も、ひいばあちゃんのように、幸せそうな顔で死ねたらいいなあ、小さいことでくよくよ悩んだりしないで、どうどうと生きたい、生きている間に、いっぱいいっぱい幸せを感じたい、と思うようになりました。


私が小学生の頃、ひいおばあちゃんが亡くなりました。私は、ものすごくおばあちゃんっ子だつたから、とても悲しみました。病気でたおれてから、日に日に顔色が悪くなり、かわいそうでたまりませんでした。

死ぬ間際に、おばあちゃんは目を開けて、みんなの顔を見まわしました。

私は今でも、夢の中でおばあちゃんが出てくると、目がさめた時、必ず涙が出てくるのです。

人の命はとてももろいもので、そして、心に残るものだと思います。


一度だけ、死について考えたことがある。人間は死んだあと、どうなってしまうのだろう、と。

あの世に行くというけれど、本当にそうなのか。だれか、行って、見て来た人がいるのか。

生きている時は、人生、あと何年くらい、などと言えるけれど、死んだあと、どれだけの時間が待っているのか。そう思っただけで、何だかこわくなってしまう。

なぜ人は生まれてくるのか、自分はどうしてここにいるのか、自分とは、だれなのか。わからないことだらけ。それでも、この世に生まれて来て、いろいろ体験できることはよいことだという気がする。どうせ死ぬのに、今から死について考えるのはやめとこう。それからは、死について、あまり考えなくなった。



若くても、それなりに、真剣に考えている者がいる! と、手ごたえを感じました。

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