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廃人ゲーマーはなぜ神をぶん殴ったのか  作者: 執行猶予
第一章 途轍もない努力?神に貰った力?いえ、裏技です。
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第16話 哀れな男

「ふはは…まんまとひっかかったなぁ?」


「ふむ?」


「あの魔物たちはなぁ!全て囮なんだよ?全てはお前の主を殺すための!!」


「…」


 男はこの街のギルドで()()()()()()()()()()最高峰の魔法具、【回復する消失】により記憶を失っていた。

 この魔法具には記憶の一部を失わせることができるという未だ解明されていない魔法が付与されている。遺跡から見つかったものなので、実存の人物がその魔法を付与できる訳ではない。

 ただ、欠点があり、[使用者自身にしか魔法がかけられない]ことと[時間経過で効果が薄くなり、思い出すまで半日程度]ということだ。

 つまり、ほとんど使い道はないのだが、今回に関しては都合が良かったようだ。


「俺たちはあのBランクパーティ【陽と陰】に暗殺を知っているだろう?」


「…」


 Bランクパーティ【陽と陰】は「黒い新星」の二つ名を持つリミニが率いるパーティだ。Bランクなのはリミニただ1人だが、その他の3人もCランクでありながらそれ以上の力を持つと言われているパーティだ。


 だが、【陽と陰】とは良く言ったもので、良い噂もあるが、別に黒い噂がある。

 曰く、金さえ払えばどんな殺人、戦争も手伝ってくれる。曰く、「黒い新星」の実力は本物だが、他の3人は工作や賄賂によりCランクまでのし上がった。

 そのような話もあったが、噂の範疇でしかなく、証拠は誰も掴めなかったとのこと。もしくは、証拠を掴み、殺されたということだ。


「虚勢を張ってるだけだと思っても構わねぇぜ?どうせその頃にはあんたのアルジサマは死んでんだ!ふははっ!」


「…」


「というかそろそろ殺された頃だろうしな。これで終わりだぁ!ふははっ!!ざまあみ…ろ?」


 男は何かに気付き、固まる。その視線の先には───口角を吊り上げたフィスがいた。


「な、何笑ってんだ?とうとう気でも狂ったのか?」


「…」


 男は悪寒を覚えていた。そして、全身をダラダラと冷や汗が流れていることを知覚する。


「な、なんなんだよ「ふっはっはっはっはははっ!!!」っ!!??」


「はははっ!はは!!ははは…はぁ……失礼。しかし、貴方がたも雇われた【陽と陰】もお可哀想だ」


「何を言って…」


「何故と問うのですか?答えて差し上げるのならば、私が一番強いと考えた貴方がたのミス、ということですかね」


「は?お、おい、冗談じゃねぇぞ」


 男は何かに気づいたようだ。だが、それが信じられる事ではないのか頭を抱えている。


「分かっていただけましたか?最低でも私の数倍近く、我が主は強い。そんな御方にその程度の存在をいくら送ったところで、勝てませんよ」


「だが、暗殺なら──」


「そんなものは以ての外。私にもよく分かりませんが、今の彼の御方は暗殺や偵察の得意な魔族の進化形態だそうです。それでいて単純な力比べでも私が足元に及ばないのだから、貴方がたの暗殺が成功する確率は…わかりますよね?」


「あああ…」


 もう男は完全に怯えきっており、魔族の進化形態などという言葉にも反応できないほどになっていた。


「───哀れですね。安らかにお眠り下さい」


 フィスも狂いかけた男を見て、溜飲を下げたのか、男の額に手を触れる。


「あ、あぁ…」


「精霊魔法・無【精神崩壊】」


 相手の魂を壊す、精霊特有の秘儀だ。

 男は音を立てて倒れる。だが、痛みを気にしている様子はない。何故なら魂は輪廻に戻ったから。正確に言うなら、輪廻に戻るために魂を修復し始めたので、肉体から離れたのだ。


「…」


 沈黙した男を見下ろしながら、フィスは真犯人を探すために街を歩く。

 主に刺客が迫っている事を伝えに行くことも考えたが、主ならそれも想定内だろうと、考え直した。

 つまり、今一番優先すべきなのは、この事件の真犯人を見つけることだ。

 彼のような男が古代の魔笛や遺跡の魔道具を使えるはずがない。絶対に真犯人──それもある程度上の階級の人間がいるはずだ。

 なんとなく予想をつけ、フィスは足を早めた。

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