第12話 ラミの戦い
「さて、今日からラミの訓練を始めたいと思う」
「よっ!待ってました!あたし、勉強とか苦手だけど、チートのためなら!」
「まあ、Lv上げすれば勝手に魔法とか覚えるんだけどな」
ガクッと項垂れるラミ。やる気を返せとか言ってるが、元々ゲームなのだ。当たり前である。
「というか、このゲーム──WoRやったことないのか?」
ここにはフィスたちがいない。なので、存分にゲームの話ができる。ちなみにここはソルトレークの大草原と呼ばれる弱めの魔物が徘徊するエリアだ。なぜソルトレークなのかは誰も知らない…
「ゲーム自体は知ってるし、やりたかったけど、やったことは無いわ。こちとら、ブラックよ?ブラック。そんなところで働いていてゲームする時間があるとでも?」
「多少は──」
「無いわよ。休日も近所に買い物に行ったら、即休日出勤だから。有給なんてあってないような物よ」
「あ、なんかごめん」
少し目が赤くなったラミに俺は謝るしかない。
「もういいわよ。さっ、チートを!」
テンションが戻ってくれて助かった。
「よし!まず、これを飲め」
「これは?」
「初心者専用経験値ポーションだ。Lv10以下の時に経験値が10倍になる」
「じゅっ!?それって凄くない!?というかなんであんたが初心者専用のポーションを持ってるのよ」
「転生用だ」
「ああ、なるほど…って!!転生!?めんどくさすぎて簡単にしろって署名活動起きてたやつ??」
そういや何年か前にそんなのあったな。何回もしてるってことは言わないほうがいいか。
「ま、それはいいだろ?今からお前を強くするんだし」
「───そうね」
チート欲しさに長話は止めてくれたようだ。近所のおばちゃん×ゲーム好きな高校生=ラミ。
「何か今失礼なこと考えな──」
「いえ、何も」
「怪し──」
『【魔術LvMax】を起動します』
「【土の傀儡】」
ラミの左右に1体ずつゴーレムを召喚する。
「えっ!?ちょっ、なに!?」
「経験値ポーション飲んだろ?こいつら倒せ。自律型にしないと経験値入らないから、強いぞ?」
「いやまってよ!装備もないのにどうやって──」
「ほいっ」
俺は鞘に入った短剣を投げた。短剣の名は[meth]。魔法生物特攻の武器である。
魔法生物というのは、関節なども魔法に作り出された擬似的なものだ。魔法を不安定化すれば、動きも遅くなり、全ステータスが急激に下がる。
それを武器にしたのがmethである。確か、emethからeを取ることでmethになることから来ていたのだったか。まさにゴーレム用である。
「え、防具は!?」
『【魔術LvMax】を起動します』
「なんとかなる。【痛覚無効】対象“ラミ”、ゴーレム自動操縦、起動」
ゴーレムが動き出す。
「待ってよ!」
「頑張れ」
ラミの戦いが始まる……勝てたら何でもしてやるからな。
「死亡フラグ立てるなぁああ!!」




