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絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第6章 学園~夏休み編~
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金と黒

 レオンとシャルの試合が始まった。

 先に動き出したのはレオンだが、いつもの攻め方とは少しだけ違った。

 土魔法で視界を遮ることなく、全速力で詰め寄り剣で斬りあげようとする。が――


「……これはまた面倒臭いな」

「やっぱり気付かれちゃいましたか」


 ピタッと動きを止めるレオン。

 なぜ止めたのか。それはシャルの体に一目では分からないほどの雷のコーティングがされていたからだ。

 雷の鎧といったほうがいいだろうか、これに剣が触ると、それを通じて高圧の電流がレオンの体に流れてしまう。

 その事に気付いたからこそレオンは動きを止めたのだ。


「それズルくない?」

「そう言いながらも私の後ろから飛んできてるのはなんですかね?」


 シャルはそう言い切った直後、素早くその場で回転し、その勢いを利用して鎌を水平に振るった。

 そして鎌によって斬られたのは、レオンが密かにシャルの後ろから飛ばしていた土弾である。


「たしかに雷属性に土属性は有効ではありますね。当たればの話ですけど」

「いやー参った参った。女の子に攻撃したくはないんだけどな」

「女の子だって守られてるばかりじゃないんですよ? 時には王子様を助ける側になりたいんです」

「王子様ねぇ……女の子の憧れだって聞くけど、あんな奴知っちゃうとなぁ」

「あんな奴……まぁ言いたいことは分からなくもないですが」


 仮にも自国の第一王子をあんな奴呼ばわりするレオンに、思わず苦笑するシャル。

 試合中にも関わらず、なぜか楽しげに会話を続ける二人。

 これは公式の試合ではなく、選抜者を決めるための試験のようなものであり、武闘大会に出たいと思わない生徒が手を抜くといった光景は多く見られた。

 真面目な生徒と武闘大会に出たい生徒は本気の試合をするが、他の生徒は手を抜く。

 レオンとシャルは他の生徒に含まれている。

 教師も去るもの追わず、ではなく、やらぬ者知らずと言った感じで手抜きしている生徒は放置している。


「ある程度やったら終わりにするか」

「そうですね。では」


 そうして始まったのは純粋な打ち合い。

 まるで舞のようにして、止まることなく大鎌を振るってくるシャルに対し、レオンはいつの間にか剣ではなく刀に持ち替えていた。

 その刀はダルク戦で用いていたもので、虹色に光り輝く刀である。


 先程も言っていた通り、女の子を攻撃したくないとレオンはひたすら受けに回っていた。呪いが消えた後は感覚を取り戻すために別メニューで鍛錬を行っていたシャルの実力を知っておきたいというのもあっただろうか。

 だが一番の理由は


(綺麗だ……)


 黒い大鎌を振るう度に、シャルの輝くような金髪が揺れるという姿に見惚れていた。

 黒と金。そのコントラストが美しさを感じさせていた。

 それを不思議に感じたのか、最初とは違い、今度はシャルが動きを止める。


「どうかしましたか?」

「いや……綺麗だなと思って」

「っ! ……不意打ちはズルいです」


 顔を俯かせ呟くシャル。その頬は赤く染まっていた。


「ともかく! 私はどうでしたか?」

「凄いな。速さもアリスよりも上だし、鋭さもだ。下手したら親父に追いついているかもしれない。でもなんで魔法は使わなかったんだ?」


 シャルの姿に見惚れていたとしても、しっかりと相手の実力を把握しようと対応していたレオンが出した結果は、シャルがダルクに迫るほどの力を持っているというものだった。

 しかしそれは近接面での話であり、魔法に関しては何も分かってはいなかった。


「まだいまいち感覚が取り戻せなくて……」

「呪いが消えて二週間ぐらいだろ? それでもまだ取り戻せないのか」

「そうみたいなんです」


 レオンはシャルの言葉を聞いて、少なからず驚いていた。

 それだけの期間を設けても取り戻せないということは、それだけ扱いが難しいということである。そしてそれは魔法の威力を物語っている。


「それではもう終わりでいいですかね? ……それに、レオン君に甘えたいですし」

「いいんじゃないか?」


 シャルが最後の方に呟いた言葉はレオンには届かなかったが、そこで二人の試合は終了となった。


 この後、レオンの不意打ちの言葉でスイッチが入ってしまっていたシャルが甘えん坊になり、カレンがそれを止めるという事件が起きた。


 こうして、合宿三日目は終わりを迎えようとしていたが.....?




お読みいただきありがとうございました。

レオンの刀についての話は後に閑話でやります。

次章に関わってくるので。


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