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絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第6章 学園~夏休み編~
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レオン、父になる

「パパ~。なんでお姉ちゃんたちは怒ってるの?」

「な、なんでだろなぁ」

「ママ~。なんでなんで?」

「わ、私も分からん」


 俺の膝の上に座っている幼女が俺とソフィ先輩に問いかけてくる。そう、俺がパパでソフィ先輩がママである。

 そして俺達の正面には怖い顔をしたカレンにアリス、それにミーナが立っている。リリィはいつもの無表情であるが俺には分かる。あれは絶対に怒っている。


 四人に睨まれて、俺もソフィ先輩も冷や汗をかいている。

 どうしてこうなったんだっけか……?


※※※


「さて、そろそろ帰りますか」

「そうだな、説明もしなければならないしな」


 俺の告白から数分。興奮状態から戻った俺は今後の事を話し始める。


「流石にこの場所は見逃せないですからね」

「この男の話もしなければならん」


 人体実験なんてまさに禁忌だろう。隠れるようにして存在していたこの場所は恐らく国も知らないであろうし報告一択だ。それにソフィ先輩が殺してしまった男のこともだ。男がやってきたことを考えれば死刑は確実であっただろうし、何かお小言はいわれるだろうがソフィ先輩が罪に問われることはないはずだ、多分。あの王様ならこれをダシに俺に何か頼みごとをしてきそうで少し怖いが。


 そして二人で部屋を出た瞬間


 ガシャーン!


 何かが割れる音がした。


「あっちからだな」


 俺達は音のする方向へと歩を進め、一つの部屋へと足を踏み入れた。

 そこには中が空ではあるが、人が入れそうな大きさのカプセルが並んでいた。恐らくこれが割れた音だろう。そして割れたであろうカプセルを探した。

 探し物はすぐに見つかった。しかし、その周りには緑色の液体が広がっていた。

 その液体の上には、一人の女の子が立っていた。


「女の子……?」

「もしかしてアレは……」


 ソフィ先輩は何かに気付いた様子だったが、それを言い出す前に女の子がこちらを向いた。

 乳白色の長髪に琥珀色のくりっとした瞳。まるでソフィ先輩をそのまま小さくしたような四歳くらいの女の子。つまりこの子も実験による被害者ってことだよな、これ。

 女の子はソフィ先輩の方を見つめ続け、そのまま駆け出して近づいてき


「ママ!」


 そう言って抱き着いた。抱き着かれたソフィ先輩は驚きのあまり固まってしまっている。

 そして今度はそのくりっとした目を俺に向け


「パパ?」


 あらやだ可愛すぎ。

 それはともかく……これは色々と大変なことになりそうだなぁ。

 俺は今後の事を思い、ため息をついた。


※※※


 この場にいても何も始まらないということで女の子を連れて屋敷へと戻ったが、当然その子は誰だとなったわけで。そりゃそうなるわな。おまけにソフィ先輩に似てるわけだし。

 そしてまず、どこで何をしていたかの質問から入った。これから同じ仲間としてソフィ先輩が加わるわけだから隠し事などするつもりはないので、ありのままを話した。

 ソフィ先輩が人工エルフであったこと。その研究所にさっきまでいたこと。俺がソフィ先輩に告白して結ばれたこと。そこでこの子を発見し、恐らくはあの研究所に残っていた人工エルフであるということ。

 ……改めて並べてみると、色々と凄いな。


 それを聞いた四人は最初の方は少しだけ驚くような表情を見せたがすぐに落ち着き、受け入れてくれた。ソフィ先輩は皆の優しさに触れ涙を流していた。

 ここまでは良かった。そう、ここまでは。

 この後に女の子が発した言葉が問題だった。


「パパ~ママ~。お腹すいた~」


 ピキン、と空気が凍る音が聞こえるかのようであった。

 そして四人が一斉に激おこモードになったんだ。

 そうだ、こんな流れだった。


「パパ? ママ? どういうことなの、レオン?」


 般若襲来。心なしかカレンの般若のス○ンドが成長を遂げているような気がする。いつもよりさらに怖い。


「た、多分だが同じDNAを引き継いでるからソフィ先輩のことを母親だと認識したんだと思う。俺がパパって呼ばれてるのは、初めて会った時にソフィ先輩の隣にいた男が俺だったからだと……」


 というかこれしか思いつかない。


「まぁ大体は分かったけど……その子はどうするつもりなの? 孤児院にでも預ける?」

「やっ! パパとママといるの!」


 カレンの言葉に拒否の意を示した女の子は俺の膝の上でくるっと回転してこっちを向き、ぎゅーっと抱き着いてくる。


「はぁ……無理矢理追い出すのもアレだし、ここで世話するしかないわね。名前はどうするのよ」


 そうか、名前か。


「それなんだが……クーフィなんてどうだろうか」


 ソフィ先輩が少しもじもじしながらも、そう提案してくる。

 クーフィ……いいじゃないか。


「よし! 今日から君の名前はクーフィだ!」

「クーフィ……クーフィ! クー!」


 あらら、喜んでもらえたようだけどすぐにあだ名作られちゃった。でもクーってのもいいな。俺もそう呼ばせてもらおう。


 こうして俺は一児(クー)の父、ソフィ先輩は一児(クー)の母となったのだった。


お読みいただきありがとうございました。


筆者のモチベーション向上につながりますので、よろしければ是非ブックマークや評価をお願いします。感想もお待ちしております。

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