表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第6章 学園~夏休み編~
69/169

造られた存在

 なんでこんなところにソフィ先輩が? それにその死体は……


「レオン、か」

「っ!」


 俺の名前を言いつつ、ソフィ先輩がこちらを向くが、普段との違いに思わず息を呑む。

 ソフィ先輩の目から、表情から、声から、何の感情も感じられない。まるで機械のようだと思わずにはいられないほどだ。それほどまでに、ソフィ先輩からは何も感じられなかった。


「ソフィ先輩……何があったんですか?」

「……ねぇ、レオン君」


 俺の問いかけには答えず、ソフィ先輩が俺を呼ぶ。しかも、全く言われたことのない呼び方で。そして喋り方まで変えて。


「なんですか?」

「お願いがあるの。私を――」


 自然と見つめ合うかたちとなり、言葉が紡がれる。


「――殺して」


 何を、言ってるんだ? 殺す? 俺が、ソフィ先輩を?


「嫌です。俺にはそんなこと出来ません」

「お願い、私を殺して。私にはもう生きる理由もない。私は生きていてはいけない存在だから」


 生きていてはいけない存在? それってどういう……


「私は造られた存在。目的を果たす為に生きてきただけ。もう目的は果たせた。だから、私に生きる意味は無い。私はこの世に存在してはいけないから」


 ソフィ先輩が淡々と語り続ける。その内容は驚愕に値するものであったが、それよりも俺には気になることがあった。


「もう、未練はないってことですか?」

「ない。だから早く殺して」


 ないんだろ? 生きる意味も、目的も、未練も。

 ならなぜ? なんで……


 なんで泣いてるんだよっ!


「ソフィ先輩!」


 俺は先輩の前まで近寄り、両肩に手を置く。


「なんでソフィ先輩は強さを求めてたんですか?」

「……復讐のため」

「復讐のため、ですか。その割には鍛錬の時なんかは楽しそうでしたよ、ソフィ先輩」

「……楽し、そう?」

「自分の実力が上がって喜んだり、アリスに惜敗して悔しんで、勝つためには何をすればいいのか模索して、そんなソフィ先輩は、いつも楽しそうでした」

「……違う。それは」

「違いません!」


 毎朝の鍛錬は俺にとっても大切な時間であった。互いが切磋琢磨して己を高めあった。そこにはいつも、復讐のためとは感じさせない、ただただ純粋に上を目指しているソフィ先輩の姿があった。


「知ってますかソフィ先輩。アリスにも弱点ってあるんですよ?」

「……そんなの、ない」


 俺の言葉に否定の意を示す。何回も手合わせしたからこそだろう。


「実はあるんですよ。ほんっっっとに少しの違いなんですけど、攻めようとする瞬間に剣を握る手に少しだけ力が入るんですよ。これを知ってれば戦いが有利になると思いませんか?」

「……対策は、出来るだろうな」

「でしょ?」

「しかし、アリスならその癖もすぐに修正してしまうだろう」

「それもそうですね……ならこういうのはどうですか?」


 俺はソフィ先輩に考えつく限りのアリス対策を話す。それに対して、ソフィ先輩も色々な意見を出す。口調も戻っている。

 ……やっぱりな。


「ソフィ先輩気付いてます? 今の先輩、すっごく生き生きしてますよ?」

「えっ……」

「ほら、やっぱり未練あったじゃないですか。もっと戦っていたいんでしょう? アリスに勝ちたいんでしょう? それに俺にだって」

「それは……」


 俺はソフィ先輩の目から流れる涙をそっと指でそっと拭った。


「生きる目的、出来ましたね」


 生きる目的が戦うことというのはどうなんだと思うかもしれない。それでも、ソフィ先輩にはまだまだ先があるんだ。こんなところで終わって欲しくない。


「造られた存在だなんだとか、どうだっていいんです。今までソフィ先輩を見ていて、そこにいたのは一人の女の子ですよ。ただ少し戦闘狂なところがあって、武人気質のね」

「レ、レオン……」

「だから、よければ先輩のことをもっと教えてくれませんか?」


 この出来事も、ソフィ先輩が言い出したことも、全ては過去になにかあっての事だろう。

 だからこそ、聞きたい。聞いた上で、支えになってあげたい。


「………私は――」


 そしてソフィ先輩は、語り始めた。



お読みいただきありがとうございました。


次回、ソフィの過去及び正体が判明します。


筆者のモチベーション向上につながりますので、よろしければ是非ブックマークや評価をお願いします。感想もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ