閑話 ある日の風景 特訓
第二章においての特訓内容の話です。
本当にこれで強くなれんの?とか思うかもしれませんが、そこは加護による補正チートが働いたと思っていただければ……。
チート……便利な言葉ですね。
今日はダルクさんとユフィさんとの特訓初日だ。
そして今は午前のダルクさんとの時間である。
「それで親父、具体的には何をしてくんだ?」
養子になったからには名前では呼ぶなと言われ、ダルクさんを親父、ユフィさんを母さんと呼ぶようにした。それならユフィさんは母さんじゃなくてお袋と呼ぶべきだと思うかもしれないが、こんな綺麗な人にお袋と言うのは違う気がする、という俺の事情による。心の中では相変わらず名前呼びだが。俺の本当の両親はリンとレオナードだという思いが関係しているのかもしれない。
「大まかな内容だが、最初の方は基本的なことを中心にやる。体がまだ完全に出来てないからな」
まだ11歳だもんな俺。
「だからといって、それを待ってたら間に合わない。というわけで体で覚えてもらう」
「? どういうことだ?」
「要するにだ。俺がひたすら打ち込むから、死にまくれ」
「……は?」
死にまくれ? この人は何を言ってるんだ?
「あー、ちょっと違うな。俺がお前にひたすら打ち込むから、それに反応できるように鍛える。気配なり、空気の動きとかを読み取れるようにだったりな。反応出来なきゃ死にかける。ユフィの治癒魔法があれば本当に死ぬことは無いし、何回でもやるぞ」
「……マジでそれやんなきゃいけないのか?」
「別の方法でゆっくりやってもいいぞ。ただその時は、お前の《想い》はそれだけだったって話だ」
楽な道程なんてないってわけだ。それに、そんなことを言われて黙ってなんかいられない。
「……やる。むしろ、もっときつくてもいいぐらいだ」
「よし分かった。それじゃ早速始めるぞ」
そして、文字通り、ダルクさんとの死に物狂いの特訓が始まった。
※※※
午後はユフィさんとの訓練だ。魔法が中心となる。
「……魔法を教える前に、やっておかないといけないことがある」
「やっておかないといけないこと?」
「……私が魔力を流し込むから、死んでもらう」
「……は?」
なんかデジャヴなんですが。午前にもこんなことなかった?
「……ちょっと違った。魔力を流し込むから、痛みに耐えて。駄目だったら死ぬ」
そして、ユフィさんは詳しいことを話し始めた。
魔力は、その人が魔法を使う度にその魔法の属性へと、より適合していく。熟練度と言えば分かりやすいだろうか。ユフィさんの魔力は全属性の魔法に適合した魔力になっているらしく、その魔力を俺に流し込み、無理矢理上書きさせるという。つまり、俺の魔力をユフィさんと同じ魔力にすることで、同じ属性を扱えるようにしようというわけだ。なお、血統属性は無理な模様。
それなら他の人達も同じことをすればいいじゃないかと思われるかもしれないが、それは無理とのこと。なぜなら、自分のものではない魔力が体内に入ってくる、言い換えれば異物が体内へと無理矢理侵入してくるのだ。かなりの痛みを伴い、下手すれば耐えきれずに死んでしまうらしい。さらに、一瞬で上書き出来るわけではなく、最低でも一カ月程、長ければ数年以上かかるらしく、大体の人はそんな長期間は耐えきれず死んでしまうらしい。この国でも極秘に研究をしていたらしいが、結局は全て失敗に終わり、挫折したらしい。
「……だけど、加護のあるレオンなら耐えられる。耐えられなかったら、レオンの《想い》がその程度だったってこと」
……夫婦揃って同じことを言ってくる。当然、俺の答えは決まってる。
「もちろん、やってやるさ」
「……なら、早速始める」
こうして、一日中死に物狂いで特訓することになったのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次の更新から学園の日常編に入りますが、三日ほど間が空いてしまいそうです。