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絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第3章 学園 ~入学編~
22/169

ロリコンと馬鹿クラス

しばらくはこんな回が続く予定です。

 俺はこれから先、お世話になる1-Bクラスの教室にいた。席は窓際の一番後ろ、憂鬱でお馴染みのハ○ヒさんと同じポジションを獲得した。前にはマルクだ。奇跡的に同じクラスになった。

 そして困ったことになった。


「ねぇねぇ! さっきの竜巻って何!」

「すごい珍しい髪の色してるね! 触っていい?」

「お前強いな! 今度俺とやろうぜ!」

「拙者もお願いしたいでござる」


 先ほどの戦いによって、クラスの皆から質問攻めにあっている。てか最後の君、村にもいなかった? この世界では忍者口調で話す人は珍しくはないのだろうか。俺もドーモ。とかアイサツした方がいいのか?


「おうおう、人気者は辛いねぇ」


 マルクめ……。後で俺とお話しようか。拳で語り合おう。

 そんな時、教室の扉がドーン! と開かれた。ドーン? それ扉を開くときに出る音じゃないよ?


「お前ら、さっさと席につけ」


 かなり低めのボイスでそう言ったのは、このクラスの担任の教師であろう男だ。

 だが、その男を見た生徒全員が固まる。

 男の見た目は、スキンヘッドに、黒のサングラスとスーツ姿。体格もムキムキ。

 完全にマフィアの幹部にしか見えない。正直めっちゃ怖い。

 

「早く座れ!」

「「「「sir yes sir!」」」」


 教師の声に反応し、全生徒が速やかに自分の席に戻る。うん、怖いもんね。


「よし、これからホームルームを始めるぞ。先に授業で使う教科書を配るから、その間に自己紹介の内容でも考えとけ」


 そして座学で扱う教科書が配られ始める。


「おっと忘れてた。生徒証を配るから呼ばれたら取りに来い。魔力を流すのを忘れるなよ」


 生徒証とはこの学園の生徒であること証明するものであり、さらには専用の機械を通して、お金を入れておくこともできる。これ一枚で王都のどこでも買い物が出来る仕組みになっている。電子マネーみたいなもんだ。最初に魔力を通した者しか扱えない、魔力認証式になっている。


「全員受け取ったな? んじゃ自己紹介の時間だ。俺は……ちゃんとした名前はあるんだが、学園ではなぜかヤンキー先生と呼ばれてる。お前らもそう呼んでくれ」


 皆が一斉に納得と言った感じに頷いている。ヤンキーの概念とかこの世界にもあるのね……。ヤンキーというよりはマフィアの方が合ってそうだが。


「んじゃ、窓側の前から順番に自己紹介してけ」


 そうして自己紹介が始まる。俺も無難に済ませ、右隣に座ってる子の番となる。


「僕はミーナ、です。適性は風で、犬の獣人、です。よ、よろしくお願いします!」


 おどおどしながらも話す、ミーナと名乗った女の子は、髪と目の両方は明るい茶であり、頭には垂れ耳、ふさふさな尻尾は緊張でピンと立っている。背は150ほどだろうか、小柄だ。しかし、母性の象徴である二つの膨らみはかなりの主張をしていた。

 俺に電撃が走る。


(萌え要素の宝石箱や……!)


 某レポーター並みの感想を出してしまうぐらいには感動していた。

 俺はすぐに話しかけた。

 

「なあミーナさん。俺はレオンだ。よろしくな」

「! う、うん! よろしくねレオン君! あと、ミーナでいいよ?」


 ニコッと笑いながらそう言うミーナ。なにこの笑顔、浄化されるようだ。


「分かったよ、ミーナ。それで一つお願いがあるんだが」

「? 何かな?」

「頼む! 少しだけ耳を触らせてくれ!」


 両手を合わせ、本気で頼み込む。獣人がいると聞いてから、触ってみたいと思ってたんだ。


「え、えっと……少しだけだよ?」

「ありがとう!」


 俺は手を伸ばし、そっと犬耳に触れる。ミーナは一瞬ビクッとしたが、顔を赤らめながら、恥ずかしそうに縮こまっている。

 俺は片方の手で優しく耳を触りつつ、もう片方の手で頭を撫でる。

 あ゛ー癒される……。最近、変な大人たちに絡まれてるせいか、荒んでいた心が癒されていく。

 今後もやらせてもらうとしよう。勿論、許可を取ってだが。


「全員終わったな。んじゃ、これで今日は解散だ。俺はまだここに残るが、好きなようにしろ」


 俺が癒しの時間を満喫していた間に自己紹介が終わっていたようだ。

 解散ではあるが、皆、教室を出ずに周りの人と話していた。好奇心が勝ったのか、ヤンキー先生に話しかけている者もいる。


「なあレオン。その子は?」

「ああ、ミーナだ」

「えっと、マルク君だよね? よろしくね?」

「おう! よろしく!」


 互いに挨拶をする二人。てかマルク声でけぇ。


「それにしてもよぉレオン。ついに学園生活が始まったぞ。めくるめく恋の学園生活だ」

「お前は学園生活をなんだと思ってんだよ」

「そんなの、可愛い子とイチャイチャ生活を送るためだろうが!」

「あはは……」


 マルクの叫びに呆れたように笑うミーナ。マルクがどんな奴か分かったのであろう。


「でも問題があるんだよなぁ」

「問題って?」

「実はな? 俺には許嫁がいるんだ」

「なん……だと……?」


 こんなやつに許嫁が……? 前世と合わせて四十年近く生きている俺でさえ、彼女の一人も出来ない童貞なのに……?


「それで、どんな問題なの? マルク君」

「それが……浮気したらあなたを殺して私も死ぬって言われたんだ……」

「うわぁ……」


 まさかのヤンデレですよ皆さん。一気に嫉妬の感情から同情へと変わる。


「大変なんだな、お前……」

「でもな? 俺も本気で彼女が好きだし、裏切りたくはないと思ってる。俺は可愛い女の子は好きだが、例え十歳であろうと、誰よりも彼女を好きだと自信をもって言える」

「お前、最高に輝いてるよ……」


 ……ん?


「すまんマルク。もう一回言ってくれ」

「んだよ、恥ずかしいから何回も言いたくないんだが。ゴホン! 俺は例え十歳であろうと、彼女の事が大好きだから浮気をするつもりはない!」

「……すまん、もう一回だけ」

「またかよ! ラストだからな!」


 マルクが思い切り息を吸う。


「俺は! 十歳の彼女が! 大好きなんだあああああああああああああああああああ!!!」


 あまりの大声に静まり返る教室。そしてぽつりと誰かが呟き始める。


「ロリコンだ……」

「ロリコン宣言だ……」

「やだ、近づかないようにしよ……」

「拙者と同類が……感激でござる」


 そりゃ、あんな大声で必死に十歳の女の子大好き宣言したら、そう思われるよなぁ。あと忍者、お前のキャラはどこへ向かってるんだ?


「なんだよお前ら! そんな目で見やがって! 別にいいだろ!? 撫でた時に気持ちよさそうに目を細めるとことか、貧乳なのを気にして恥ずかしがってる姿とか、たまんねぇんだよ! 貧乳最高!」


 一斉にドン引きする女子一同。一方、男子の中には頷いている者もいる。貧乳派の方々だろう。

 流石に止めるべきだと思ったのか、ヤンキー先生が立ち上がる。


「さっきから何叫んでんだマルク……」

「先生、でも……」

「分かった、分かったから。お前が言いたいことは分かった。だがな?」


 ヤンキー先生が思い切り息を吸う。あれ、なんかデジャヴ……。


「貧乳より、巨乳の方が良いに決まってんだろうがあああああああああああ!!!!」


 ヤンキーせんせええええええええええええ!? 

 またしてもドン引きする女子一同。そして頷く一部の男子共。巨乳派の方々だろう。

 本来ならストッパーになるはずの人まで、加わり始めてしまった。

 流石にこれはマズい。俺が止めに入るしかないか。

 俺は思い切り息を吸う。


「大きさなんて関係ねぇ! 好きな人の胸こそが、一番最高に決まってるだろがあああああああああ!!!」


 完璧だ。これで無駄な争いは終わるであろう。

 女子は相変わらずドン引きだが、男子共は感動のあまり、スタンディングオベーションだ。


「レオン、俺、間違ってたよ」

「教える立場の者としては失格だな俺は……。大事なことに気付かせてくれてありがとう」

「いいんだよ、俺達、仲間だろ?」

「「レオン!」」


 三人で抱きあう。感動のフィナーレだ。クラスの男子共の結束が固まった瞬間だった。

 女子一同がドン引きし、男子一同が感動の涙を流す。


「……なにこれ?」


 ミーナが何か呟いていたようだが、俺の耳には届かなかった。


 後日談だが、あまりにも大声で騒いでいたため、他のクラスの教室にまで声が届いていたらしく、1-Bクラスは馬鹿の集まりであるとされ、馬鹿(BAKA)の頭文字がBであることから、馬鹿クラスと呼ばれるようになった。

 馬鹿(男子)に巻き込まれたクラスの女子達の視線がかなり痛かった。



 

お読みいただきありがとうございました。

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