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絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第3章 学園 ~入学編~
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レオンVS学園長

戦闘回です。

最後の方にカレン視点があります。

 学園長の呼びかけにより、全校生徒が第一訓練場へと集まっていた。

 国主催で行われる武闘大会などにも使われる、東京の某ドームと同じほどの広さをしており、もちろん観客席もある。

 中央に集まり、学園長の言葉を待つ。だがここで、俺の脳内センサーが警鐘を鳴らす。自由奔放な大人達の相手によって培ってきたスキルだ。


「これより新入生歓迎のレクリエーションを行う! 内容はワシとの一騎打ちじゃ! 制限時間は五分! どちらかが気絶するか、降参すれば勝敗が決まる。面白そうじゃろう?」

 

 ドヤ顔をし、そう発言する学園長。さらにそれを聞いて盛り上がる生徒達。英雄を育てた人として知られる学園長の戦いが見れるんだ。そりゃ、興奮するだろう。

 でもな? まだ肝心なことを言ってないんだぞ? センサーさんがビンビンですよ。


「希望者全員とやるのは流石に時間がかかるしのぅ。ここはワシが選ばせてもらうとしよう。なに、退屈はしなかろう。それでは――」


 わざとらしく対戦相手を探すように生徒たちを見渡し、その目がこっちを向く。うん、分かってた。前に会った時の戦う場を用意するという言葉を思い出す。絶対このレクリエーションのことだよなぁ。


「レオン=ガーディア、お前じゃ! こっちへ来い!」

「……うっす」


 新入生歓迎のレクリエーションですよね? 俺も新入生ですよ? てか周りの視線がきつい。


「他の者は観客席に移動せい。しっかりと結界を張っとくから被害は出んじゃろう。中では死ぬこともないから本気で来るのじゃぞ?」

「そっちも本気なんだろ?」

「当たり前じゃ。せっかく猛者と戦えるんじゃ。本気でやらんでどうする」

「ですよねー。てか制服なんですけど」

「戦闘時に使えるように、丈夫に作られてるから大丈夫であろう。動きやすさもばっちりのはずじゃ」

「この制服すげえ……」


 白寄りのクリーム色というのだろうか?それを基調とした制服だ。ネクタイの色によって学年が分かるらしい。個人的には黒がよかったが、そうすると髪の色も相まって全身黒になって暗い印象を与えかねない。


「それでは両者、位置についてください」


 ここの教師であろう審判に言われ、お互いに少し離れ、武器を構える。

 俺はダルクに貰った剣を、学園長は木製であろう杖を構えている。黒いローブを着ているため魔法使いという言葉が似合うと思う。怪しい教団にいそうな人に見えなくもない。


「それでは……始め!」


 試合が始まった。久しぶりの対人戦だ。

 

「まずは小手調べだ」


 俺は開始の合図と同時に目の前に、土魔法で大きな壁を作り、視界を塞ぐ。そして転移を使い学園長の後ろへ現れ、剣を素早く振り下ろす。

 だが、学園長の杖によって防がれてしまう。


「まさか転移を使えるとはのう。ならばワシも」


 そして学園長が消え、俺の後ろに現れ、杖を振り下ろしてくる。さっきとは逆に俺が受け止める形になるが――


(おっも! これが老人のするような攻撃かよ!)


 武器に魔力のコーティングを施すことで、強化をすることが出来る。緻密な魔力操作を必要とするので出来る人は多くはないが、学園長なら当然出来るだろうし、俺も一応出来る。

 にしても見た目魔法使いなのにパワーまで相当なもんだ。脳筋の師匠なだけある。


「やはり転移魔法は疲れるのぅ。ここからは地力勝負といこうではないか」

「上等!」


 転移は元は空間魔法であり、強力な魔法でもあるため、かなりの魔力を消耗する。なので乱発は出来ない。

 仕切り直しとばかりに、元の位置に戻り、再び武器を構える。

 そして、思いっきり足を踏み出し、一気に学園長との間合いを詰め、斜めに振り上げるが防がれる。それからも、お互いが相手の隙を見つけては攻撃を交わすが、受けとめるか、体をわずかにそらす程度で避けるなどが続き三分ほど経っただろうか。埒が明かない。仕掛けるか。

 後ろに大きく跳躍すると、それを追いかけるように学園長も前へと詰めてくる。

 そして、宙にいる俺に向けて、圧縮した水の弾丸を超高速で飛ばしてくる。アレに当たってしまえば蜂の巣コースだろう。

 咄嗟に目に魔力を通して視力を強化し、剣で弾丸に対処していく。そして、俺が着地したと同時に、いまだに放たれる水の弾幕に紛れて俺の懐に潜り込んでくる。だが――


「それを待ってたよ!」


 魔法も上手く対処され、近接においても決着がつかない。なら、防ぎきれないほどの圧倒的な出力の魔法で仕掛けるか、大きな隙を作ってそこで近接による一撃を仕掛けるか。どちらかになるだろうと予想した。魔法使いな見た目である学園長だとしたら、普通は前者の方法で攻めてくるだろう。実際に水の弾丸は強力だったし、誰だって魔法で攻めてくると思うはずだ。だからこそ、逆で攻めてくる。

 そんな俺の予想が当たった。


「むっ!?」


 懐に潜り込んできた学園長だったが、不意に後ろから飛んできた一発の水の弾丸に気付き、動きが鈍る。俺がこっそりと空間魔法を使い、後ろに移動させた弾丸だ。動きが鈍った一瞬の隙を突き、重力魔法を使って上から大きな圧力をかける。これは同じ重力魔法によって反発させる力を生むことで相殺できる。もちろん学園長もやってくるが、弾丸の対処もあり、結果として大きな隙が生まれる。

 

(確実に仕留める!)


 剣ではなく、魔法によって確実に仕留めることを決めた俺は、学園長を思い切り蹴り飛ばし、魔法を発動する。


「燃え上がれ!」


 風魔法によって大きな竜巻を発生させ、そこに火魔法を合わせることで特大の火――というよりは、炎の竜巻を作り上げる。


「ぐおおおおおおおおおお!!」


 竜巻をモロに食らった学園長の叫び声が響く。そして、少しした後、竜巻が消える。

 そこにはボロボロの状態の学園長が膝をついて存在した。満身創痍だ。もう動くこともできないだろう。

 歩いて近づいていき、首元にそっと剣をそえる。


「……参った! あっぱれじゃ!」

「勝者! レオン=ガーディア!」


 審判の宣言に、一瞬、シーンと静かになったが、すぐに大きな歓声に包まれる。

 あー疲れた。いい訓練になったとも思うが、魔力を大量に使った反動で体が重い。


「いやはや、本気を出してないお主にすら負けてしまうとは。これからのワクワクが止まらんわい」

「? 本気なら出したが?」

「何を言っておる。お前の手首に付いてるのはなんじゃ」

「あー、忘れてた」


 俺の両手首にはリストバンドが付いていた。これはダルク達に鍛えてもらっていた時に着けていた魔力強化用の道具で、常に魔力に負荷がかかる状態となる。

 つまり、手加減状態で戦っていたことになる。

 筋力強化用のギプスはともかく、これは付けてても違和感なくてそのままだったんだよなぁ。むしろ魔力に負荷がかかってることに慣れすぎてこっちがデフォルトになっている。


「見てた者たちも満足したようじゃし、これでレクリエーションは終わりじゃの。また戦おうぞ」

「程々にしてくれよ?」

「分かっておるよ。では皆の者! レクリエーションは終わりじゃ! 新入生はクラスを確認し、教室に移動せよ。解散じゃ!」


 そうして俺も自分のクラスを確認し、教室へと向かった。


※※※

 

 私は思わず自分の目を疑ってしまった。

 あのレオンが学園長に勝ったのだ。

 学園長は先の大戦において、圧倒的な力を見せつけ、魔族を滅ぼしたという英雄を育て上げた者として知られており、実際にかなりの強さで英雄の次に強いと言われてるほどだ。

 そんな人と、一年ではあるが一緒に過ごした幼馴染が、対等以上の力を見せつけ勝利してしまったのだ。

 戦ってる最中の動きもほとんど見えなかったし、魔法もかなり強力なものであった。レオンは英雄に匹敵するほどの力を持っている――そう感じさせるほどの試合だった。

 周りの人達も、あまりの速さに、目が追い付いつかなかったようだ。でも、凄い試合を見れたと、興奮している。

 だが私は違った。

 なぜなら、昔の彼を知っているから。

 四年ほど前の彼はガルムさんに稽古をつけてもらっていたが、普通の大人より少し強い程度だったはずだ。それなのに、たった四年であの学園長を倒せるまでの強さに成長していた。

 並大抵の訓練ではそうはならない。つまりは人には想像もつかないほどの、本当に過酷な訓練を積んだのであろう。

 そして、気になった。彼がそこまで強くなった理由とは何なのだろうか。

 もちろん、ボーン村が消えた後の、レオンがどんな道を歩んできたのかも気になる。だが、それほどの強さをつけるためにはとってもとっても大きな覚悟が必要だ。

 聞きたいことは尽きないが、後で絶対に問いただそう。

 そう決めた私は、指定された教室へと、歩を進めた。


 


戦闘シーンの描写って本当に難しいですね……。

上手く伝わっていればいいのですが。

お読みいただきありがとうございました。

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