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絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第3章 学園 ~入学編~
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心の救済

シリアス?

割とガバガバ内容な気が。


 俺はしりもちをついているアリスに手を差し伸べた。紳士ぶっているが、内心では助けられてよかったという安堵の気持ちで一杯だった。


「………はっ! あ、ありがとう」


 魔物が殺され、目の前に俺が急に現れたせいか、しばらくボーっとしていたアリスだったが、気を取り戻し、俺の手を掴んで立ち上がる。

 その時にアリスの手の皮が硬かったり、豆があることに気付いた。

 かなりの鍛錬を積んできた証であろう。

 この世界には治癒魔法が存在するが、世界を救った英雄の影響によって皆が攻撃魔法などに重点を置くため、治癒魔法師は貴重な存在となっている。ユフィさんは使えていた。俺は擦り傷を治す程度なら出来る。

 いくら貴重な存在とはいえ、王都ともなれば流石にいるだろう。

 豆が戦闘中に潰れてしまい戦闘に支障をきたすといけないため、治癒魔法で治してもらうのが常識だ。

 だがアリスは違った。きっと何か事情があるのだろう。

 俺がそんなことを考えていると、アリスが恐る恐る問いかけてきた。


「なあ、お前の名を教えてくれないか……?」


 まあ当然の質問であろう。四年も会ってないし、俺も成長した。何よりも俺はあの事件で消息を絶ってしまった。気付いていようがいまいが、聞くのは当たり前だろう。


「ああ、ボーン村のレオンだ。……久しぶりだな、アリス」

「! レオン……レオンっ!」

「うわっ!?」


 俺の言葉を聞いた直後、アリスが胸に飛び込んできた。そして再会を喜び泣いていた。

 それを見てこんなにも俺を心配してくれていたのかと、嬉しい気持ちになった。

 ぽんぽんと頭を撫でてやりながら、改めてアリスを見る。

 以前に会った時と同じで燃えるような赤の髪をショートカットにし、同じ色のキリッとした目、身長は175cmと同年代では高い方の俺と比べてみたところ、10cmほど下といったところか。同年代の女子よりも、かなり高いだろう。年をとった影響か、大人の女性特有の色気みたいなものも感じ取れる。

 だが、何よりも気になるところがある。

 胸だ。

 抱き着いている影響で、さっきから俺の体に押し付けられている、二つのお山は、かなりの凶器と化している。かなりの大きさだ。登ってみたい、このお山。

 これ以上このままでいると俺自身が魔物になって襲いかねないため離れてもらう。


「すまん、恥ずかしい所を見せてしまった。」

「別にいいって。役得だったし」

「役得? まあいい。それよりもお前のことについて聞きたいんだがいいか?」

「別にいいが、その前に少し時間をくれ」


 俺は、魔物の死体を火で燃やした後、穴を掘り、護衛の兵士の死体を埋め、両手を合わせた。

 アリスも俺がしようとすることに気付き、手を合わせた。


「優しいな、お前は」

「そうか? お前のために戦ってくれた戦士に敬意を払うのは当然だろ」

「いや、それでもだ」

「そうか。まあいい、俺のことについてだったか?」

「ああ」


 そして俺は、あの惨劇の後の俺の経緯について簡単に話し始めた。強力すぎる力である消失のことや、隠居生活を望んでいるダルクさんたちの名前は伏せたが。

 俺が狩りの最中に村の異変に気付き駆け付けたところ、村が荒らされており、犯人である男がいた。攻撃を仕掛けたが反撃にあい、そこで意識を失ってしまう。気付いたらある男と女に拾われて、育ててもらい鍛えてももらった。そして王都にある魔法学園に通うためにこの道を歩いていた。

 大体このような内容だ。

 何かを隠すために話を多少作り変えるというのは難しいものだな。

 当然、疑問が残るような内容ではあるが、あまり思い出させたくないからなのだろうかそれ以上は深く聞いてこなかった。


「大体は分かった。次の質問だが、先程から思っていたがなぜお前はそこまで強くなった? 鍛えてもらったにしろ半端な覚悟ではそこまではならなかったはずだ」


 アリスでも苦戦するような魔物をいとも簡単に倒してしまったのだ。四年前はアリスにボロ負けしてた俺が、なぜここまで強くなれたのかが気になるのだろう。

 真剣な目で俺を見つめてくるアリス。

 アリスの真剣な目に対して自分も真摯に立ち向かわなければいけない、そう思った。

 俺は口を開いた。


「大事な人達を、守るためだ」

「守るため?」

「ああ、俺にもし力があれば、父さんも母さんも、子供達も他の村の大人たちも、救うことが出来たかもしれない。もうこんな後悔をしないためにも、俺は力を求めたんだ。そうして強くなれた。滑稽だよな、大事な人達をほとんど失ってからじゃ遅いのにな。ただの自己満足みたいなもんだ」


 俺はいつの間にか心の隅で思っていたことも、吐き出してしまっていた。

 守る力は手に入っただろう。しかし、カレンとリリィが残っているとはいえ、既に多くの人がいなくなってしまった。もう少し早く力を付けていれば。そんなことも思ってしまう。

 急に、体が何かに包まれた。

 俺はアリスに抱きしめられていた。


「立派だ。お前は立派だ」

「え……?」

「確かにお前が力を付けるのがもう少し早ければ、村は助かったかもしれない。しかしお前だけじゃないんだ。四年前に村に訪れて感じたが、あの村の人達が村の生活を本当に大事にしてることが伝わってきた。危険になったら、普通なら自分の命優先で逃げるようなやつだって世の中にはいる。でもあの村の人達は、そんなことはしないとお前だってわかってるだろ? 何もお前だけが背負う必要はなかったんだ。お前と同じで、守りたいと思ってるやつらは他にもいるんだ。もっと周りを信じろ。結果的に大事な人達を失ってしまったが、お前はそこで腐らなかった。心が折れていてもおかしくはなかった。そこまで強くなったんだ。さぞかし過酷な修練を積んだのだろう」


 そしてさらにギュッと俺を抱きしめるアリス。


「辛かっただろう? だから、言わせてくれ」


 そして、俺を少し見上げるようにして


「守ってくれて、ありがとう」


 救われた。そう感じた。


 あの惨劇で、自分に力があればと思った。だがそれはあくまでも自分の中で考えたことであった。他の人の気持ちを考えたことは無かった。自分でどうにかしなければ。ただの自惚れだ。なぜ気付かなかったのか。ひたすら力を求めたが、守れなかった罪意識が大きかった。それを紛らわせる、自己満足だった。俺には本当に誰かを守る資格はあったのか。

 様々な感情がうずまいていたが、今までの自分を否定してしまうかのようで怖かった。

 そんな俺でも、こうして守ることが出来た。

 無意識のうちにアリスを抱きしめ返していた。

 あっ、と声を出していたが嫌な素振りは見せなかった。

 自然に目が合った。

 

「レオンが無事で、本当に……本当に良かった……」


 涙を浮かべながらも、とても綺麗な笑みをしていた。

 それを見た瞬間、無意識に俺の顔が動く。

 そして、アリスは目を閉じ――


 二人の唇が重なった。


 

 



えんだあああああああああああああああ


お読みいただきありがとうございました。

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