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絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第9章 ???~決戦編~
145/169

ありがとう

 意識がぼんやりとしている。

 確か俺は魔王と戦っていたはず。少しでも気を抜けばあの世行きの、緊張感マックスの状況で、こんなにぼんやりとしてたら駄目なはず……


「あれ?」


 どうして俺は横になっているのだろう。とりあえず体を起こしてみる。


「まさか夢だった……? いやでも……」


 そうだ!俺は胸に風穴開けられて……って開いてない。ぺたぺた触って確かめたが、ちゃんと筋肉の感触が返ってくる。


 てことはここは死後の世界?それによくみたらここは……


「辺り一面白い部屋……神様と会った場所か」

(………うん)


 既に慣れた、頭に声が響くこの感じ。どうやら俺はまた神様に呼ばれたようだ。


「なぁ、俺はあの後どうなったんだ?」


 既に俺は死んでいるのかもしれないというのに、不思議と心は落ち着いている。いや、なぜかは分かっている。


(……魔王に敗れた)

「そうか……それで? 神様の策とやらを聞かせてくれないか?」


 俺の言葉を受け、クスッと小さな笑い声が聞こえた。


 魔王に負けた。実際に戦ったから嫌でも分かる。アレは俺でなければ抑えられない。加護によって上限がほぼなく強くなれる俺でなければ駄目だ。他の人達はあくまで人間の限界の範囲内での強さだ。


 そして俺はここに呼び出された。死んだはずなら、俺にはもう何も出来ないにも関わらずだ。それに神様は敗れたと言っただけで死んだとは一言も言ってない。


 そう考えれば分かるってもんだ。神様にはまだ、策が残っていると。

 こんな状況で男のプライドなんて関係ない。どんな方法を使ってでも勝ってやる。例えそれが神様の力だとしても。


(……私は前に言ったはず。力を溜めておくと)

「言ってたな。何をしてくれるんだ?」

(………声を届ける)

「はい?」


 声を届けるって……そのまんまの意味でいいのか?


(……貴方にとって、大事な人達の声)

「なるほど、そりゃ最高のプレゼントだ」


 しょぼいだとか、それだけかよとか、そんなことは思わない。

 俺には抜群の効き目だろう。


 戻ったらやることは単純だ。

 リーフェさんを取り戻し、世界を救う。


「ありがとな、神様」

(どういたしまして)


 礼を述べたところで、ふと疑問に思う。なぜ今更と思わなくもないが、次にいつ会えるかは分からないし聞いておくのもいいか。


「神様、なんで転生者に俺が選ばれたんだ?」


 人柄や能力。もしかしてランダムだったのかもしれない。そもそも俺が選ばれた理由が思い浮かばない。


(……教えない)

「えぇ……」

(……でもヒントならあげる)


 どこか悪戯っぽさを感じさせる声が響く。すると俺の体が少しずつ消え始めていく。また気になる言葉を残していくパターンか。次の言葉を大人しく待つことにする。

 そんなことを考えていると、目の前に小さな女の子が二人現れて


「「私を助けてくれてありがとう! お兄ちゃん!」」


 満面の笑みを見せてくれた。


 優ちゃんとユウちゃん――俺が前世で助けた女の子と、こちらの世界で助けた女の子。

 きっと神様はこの女の子達を通して俺の事を見ていたのだろう。それで俺を問題なしと判断して選んだのだろうか。別に文句を言いたい訳では無い。

 子供好きとしては、子供の笑顔を守れた。それだけで充分だ。


 そしてその笑顔を無くさないようにするのが、俺の使命だ。


 さぁ、行こうか。


お読みいただきありがとうございました。

優とユウ。二人の名前が同じだったのはこんな理由がありましたとさ。

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