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絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第8章 学園~学園祭編~
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兄妹

 学園祭は二日目を迎えていた。

 本日最初のデートの相手は俺の最愛の妹であるリリィだ。最近はスイッチが入ると、淫乱モードになるという恐ろしい属性まで追加された。その結果俺は襲われ最後までいってしまい、責任を取ることになってしまった。血が繋がっていないのが幸いだった。これで実の妹だったら俺に対する世間の目が大変なことになっていたであろう。


 既に学園祭は始まっている時間ではあるが、俺とリリィは屋敷に残っていた。


「そんじゃ行くか」

「……うん」


 リリィと手を繋ぎ、転移をする。

 

 そして俺達は開けた地へと来た。周りを森に囲まれており、どことなく懐かしく感じるような匂いを風が運んでくる。


「ボーン村……前にここに来てから半年しか経ってないんだよな……」

「……私は五年ぶり」


 そう、ここは俺達の故郷でもあるボーン村があった(・・・)場所だ。

 ここで俺は生まれ、父であるレオナードと母であるリンに育てられた。一歳になる頃にはリリィも家族に加わり、馬鹿(誉め言葉)な大人達と一緒に暮らしてきた思い出の地だ。そしてカレンとも出会った地でもある。


 俺が今の義理の両親であるダルクさんとユフィさんの元で鍛えてもらい、王都へ旅立つ前にここに寄り、俺が元気でやっていることを伝え、今度やって来た時はお土産話を持ってくると誓った。

リリィはそもそも人が多い場所は苦手だから学園祭にはあまり興味はなかったらしく、ちょうどいいしこの時間を使ってボーン村へとなったわけだ。それに報告ならここで育ってきたリリィも連れてくるべきだろう。


 村の跡地の中央に立ち、手を合わせ黙祷。


 それが終わると俺はこれまでのことを話し始める。リリィはそれに細かく補足を入れてくれる。

 例をいくつか挙げると


「前にここを去ってからすぐに魔物に襲われていた第二王女様を助けたんだ」

「……おっぱいが大きくて、美人。レオ兄の婚約者」


 不機嫌そうなリリィ。俺はぺったんも好きだぞ。

 他には


「娘が出来たんだ。実の娘ってわけじゃないけど、めちゃくちゃ可愛い」

「……五歳児くらいなのに、わたしよりおっぱい大きい。でも可愛いから許す」


 コンプレックスなの?俺はぺった(ry

 さらには


「魔族と戦ったんだ。どうにか勝てたよ」

「……私は天使だった」


 リリィちゃんマジ天使。ネットスラングでもなんでもなく本物の天使だった。


 濃い時間を過ごしてきたなぁと苦笑してしまう。


「……レオ兄の妹で良かった」

「ん? 急にどうした?」


 突然リリィが嬉しいことを言ってきた。兄冥利に尽きるが、どうしたのだろうか?


「レオ兄の妹になったおかげで、皆と出会えた。色んな楽しいを知れた。好きな人といれる喜びを知れた。私だけだったらきっと何も出来なかった。いつかカレンとも別れることになって、あの男の妻にされて、ただただ空虚な日々を過ごすだけだったと思う。だから、レオ兄の妹で良かった」


 いつも感情表現が乏しかったリリィの表情が、可憐な笑顔に変わっていた。守りたい、この笑顔。


 俺は隣に立っていたリリィの頭にポンと手を置く。


「というわけだ、父さん、母さん。俺達は元気にやってるよ。もう何も失わないように俺は全力を尽くして皆を、世界を守る」

 

 二人にも俺の決意を聞いてもらいたかった。だから堂々と告げてやった。


 すると不意に、頭の中に声が響いた。


「う……うぅ……立派になりやがって……」

「あらあら~泣かないで~」


 この声は……!

 隣を見るとリリィが目を見開いて驚いていた。リリィにも聞こえているみたいだ。

 前にも同じようなことがあった。アリスと想いが通じあったあの時にも聞こえたこの声は、俺達の両親の声。加護の力ではないかと思っているが、真実かどうかは分かっていない。


「レオン! リリィを泣かせたら承知しないからな!」

「二人とも、ファイト~」


 ……分かってるよ、任せとけ。


 声は聞こえなくなった。言いたいことだけ言って消えてしまったようだ。


「レオ兄、今のは……?」

「父さんと母さんだよ。あれを言うために少しの間だけこの世に戻ってくるなんて、とんだ親バカだよな」

「っ!」


 俺の言葉を聞いたリリィの目尻には涙が溜まっていた。本当は最初から分かっていたのだろう。あれが両親の声だと。


「泣くなって。父さんに怒られちまう」


 そっと涙を指で拭ってやる。


「ファイトって言われたし、頑張らないとな」

「……うん。レオ兄の為に、私はなんでもする」


 リリィの瞳には、力強い光が宿っていた。


「なら森でも散歩するか。ついでに湖にも行こう」

「……分かった」


 俺達は手を繋いで森へと向かった。その時に吹いた風が、俺達の背中を押してくれた気がした。



お読みいただきありがとうございました。

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