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絶対守護者の学園生活記  作者: 若鷺(わかさぎ)
第7章 学園~ブトウタイカイ編~
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復活の兆し

 孤児院に入ったはずが、俺は見覚えのある白い空間にいた。これはそう、転生する時に訪れた場所。

 つまり――


「俺は呼ばれたってことでいいんだよな?」

(……うん)


 俺の頭に響く声。

 どうやら予想は当たってたらしい。俺は神様に呼び出されたようだ。

 とりあえず呼び出した理由を聞いてみる。


「それで、一体なんの用だ?」

(……魔王の気配が強くなってきた)


 魔王?それって大戦の時に親父が倒したっていう、魔族を統べる王のことだよな?


「もしかして復活するってことか?」

(……その可能性は高い。恐らく、あと一歩というところまできてる)


 一大事じゃねぇか……

 魔族の活動が活発化してるのもこれが理由だろ、絶対。

 アリスやシャルを狙った理由はこちらの戦力を削るためだと思ってたが、魔王が蘇るとなるとその説が濃厚になるな。

 魔王が蘇ると同時にこちらを攻めてくるのだろう。


「なぁ、魔王が蘇るまであと一歩って言ってたが、条件か何かがあるのか?」

(……これも推測になるけど、依り代となる肉体を求めてる可能性がある)

「なっ.....!」


 おいおい、もしそれが当たってたとしたら……


「アリスやシャルは、魔王の蘇生の生贄にされたかもしれないってことか?」

(……依り代の条件に当てはまったのがあの二人だったのかもしれない)


 俺の心が黒く染まっていく気がした。怒りでどうにかなりそうだった。

 神様の言う通り推測の域を出ないが、俺の大事な人を生贄にして世界を滅ぼそうとするんだとしたら。


 そんなの、絶対に許すわけがねぇだろ!


(……私も力を蓄えてる。だからお願い、それまでどうにか持ちこたえてほしい)

「神様も手伝ってくれるってことか? それは心強いな。でも神様が出る前に終わらせてもいいんだよな?」

(……本当に頼もしい)


 ふふっと神様が笑ったような気がした。が、俺は神様の言葉に違和感を感じた。

 本当に頼もしい。その言葉はまるで普段の俺を知っているかのような口振りで。

 ……神様だし下界の様子は見れるからとかか?やだ覗き?事務所の許可取った?


 そんなくだらないことを考えていると、俺の体が段々薄れていく。どうやら時間のようだ。


「とりあえずやれるだけやってみるよ」

(……うん)


 神様にそう告げ、そういえば神様の喋り方ってリリィに似てるなぁと思いつつも、俺の体が完全に消えるその瞬間


(私の子を、リリィをお願い……)


 どうして神様は毎回意味深なことを最後に言うんだよ!

 そのツッコミをすることは間に合わなかった。



 どうやら無事に戻ってこれたようで、いつの間にか閉じていた目をゆっくりと開く。

 目の前には俺を心配そうに見つめるユウちゃんがいた。


「レオンお兄ちゃん、大丈夫?」

「あぁ.....もう大丈夫だ」


 どうやら神様と会っていた間、俺はぼーっと突っ立っていたらしい。そんな俺を見つけて心配してくれたようだ。

 安心させるためにもユウちゃんの頭を撫でてあげると、えへへと可愛い笑顔を浮かべる。

 ……この笑顔を守る為にも、魔族に好き勝手はさせられないな。


 その後、俺はクーを連れて屋敷へと戻ったのだった。


※※※


「魔王の復活、それに私の子リリィか……」


 夜となり、後は寝るだけとなった俺はベッドの上で大の字に寝ながら考え事をしていた。

 内容は当然、神様との会話についてだ。


 魔王が復活するということ、それは即ち大戦の勃発を意味している。魔族の活動が活発になっていたことにより、こちら側にも多少の心構えが出来ていただけ前回よりはマシだろうか。

 魔族の居場所を探っている親父からの連絡が無い以上、俺達は受けに回るしかない。

 この世界の存続に関わることだし、また後で王様と親父を通して根回しをしないとな。


 そして神様が終わり際に言っていた、私の子リリィという言葉。

 リリィは神様の子供だったってことだよな……?

 たしかにリリィは拾い子だから本当の親が誰だかは分からない。だからといって神様の子供だったのかと簡単に受け入れるのも、普通なら難しい。

 でも本人……神だから本神?に言われたら信じるしかないよなぁ。

 でもそうするとリリィの神がかった可愛さにも納得が出来る。リリィマジ天使がある意味本当のことになってしまった。

 ……神様の子供だからリリィも神様なのか?リリィマジ神様……語呂が少し悪いしリリィマジ天使のままでいいや。


 とにかく今日は疲れたしさっさと寝よう。クーの武闘大会出場メンバー入りに神様との衝撃の会話で精神的に疲れた。


 俺はベッドに潜り込み、そのまま寝ようとしたが――


 コンコンと、部屋の扉を叩く音が聞こえた。

 なんだろなぁ、俺が何かしようとすると直前で止められることが多い気がする。

 それはともかくこんな時間に誰だろうか。


「レオン君、少しいいかな?」

「ミーナか。入っていいぞ」


 ガチャ、とミーナが部屋の中へと入ってくる。寝間着だろう、生地の薄い服を着ているからか二つの膨らみが目に毒だ。思わず目が見てしまう。


「レオン君、目がえっちだよ?」

「待て、これは男の(さが)なんだ。許してくれ」

「許すも何も、最初から怒ってないよ? それに、今日はその、そういう目的で来たんだから」

「目的?」

「合宿で約束したでしょ!」


 あぁ、あの鬼ごっこの時の約束か。

 別に忘れていた訳では無い。たださっきまで考え事をしていたのと、寝る瞬間だったから睡眠モードに入っていたせいですぐに思い出せなかった。


 つまりミーナは、夜のお誘いに来たってことだよな……?

 約束したからというのもあるが、何よりミーナと繋がりたいという気持ちは俺にもある。


 俺が忘れているのではと勘違いし、ミーナは悲しそうな表情をしている。


「ほら、ここ座れ」


 俺はベッドの端に腰掛け、隣をポンポンと叩く。

 頷いたミーナがちょこんと座る。


「忘れたわけじゃない、これは本当だ」

「……なら、誠意を示すべきだと思うよ」


 ミーナがこちらを向き、唇を突き出してくる。ぷるぷると体が震えているし、顔も真っ赤だ。かなり緊張しているのだろう。


 ミーナを安心させるために、優しく抱き締めちょんと軽く触れるだけのキスをする。

 唇が離れる時の、ん……とミーナが漏らす熱い吐息の影響か、比較的幼い外見をしているミーナが艶めかしく見えた。


「その、触るぞ?」


 経験があるとはいえ、やはり緊張してしまう。俺はミーナの胸の前に手を出し、許可を求める。

 ミーナはさらに顔を真っ赤にしていたが、こくんと小さく頷いた。


 そして指が服越しのミーナの胸に触れる、その瞬間――


「レオン、明日なんだが……」


 入室の許可を取らずに、ソフィ先輩のまさかの登場である。

 俺もミーナも、固まってしまう。

 そんな俺達を見て、色々と察したようでソフィ先輩の顔がにやける。


「ほうほう、私は邪魔だったようだな」

「そ、そそそそんなことないよ! ね!? レオン君!?」

「そ、そうだな」


 ミーナの慌てぶりが半端ではない。あまりの剣幕に、俺は肯定することしかできなかった。


「でも交わろうと……いや、えっちしようとしていただろう?」

「そそそそうだよ! えっちしようとしてただけだよ! ね!? レオン君!?」

「.....そうだな」


 こんだけ目の前で慌てられると、逆に俺が落ち着いてきた。

 というかソフィ先輩は絶対面白がってるだろ。

 これ以上ミーナを放っておいたら何を言い出すか分かったもんじゃないし、とりあえず止めよう。


「なぁミーナ、そろそろ落ち着「そうだ!ソフィ先輩も一緒にしませんか!?」……は?」


 え?今なんて言ったこの子?一緒に?


「む? いいのか?」

「いいですよ! ね!? レオン君!?」

「いや、よくな「いいよね?」はい!」


 思わず答えてしまった。

 なんというか、逆らってはいけないオーラがミーナから出ていた。まるでカレンの般若のような……


「レオンの為にいろいろと学んだんだ。期待していてくれ」

「頑張りましょうね! ソフィ先輩!」


 ……もういいや、流れに身を任せよう。


 こうして、三人での激しい夜は更けていった。




お読みいただきありがとうございました。


前話でも書きましたが、筆者の新作「見え無き死の刃は怠惰に過ごしたい」もよろしくお願いします!

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