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約束の翌日

タイトル通り進みまーす

朝9時、俺はとある公園に向かっていた。


ご存知の通り、あの少女との約束で、また明日、この公園に来て欲しいと言われたからである。

だからと言って、何故このくそ暑い朝から公園なんぞに行かなくちゃならんのか。

まあ、どうでもいいけどな。


キィーッ!

自転車のブレーキを掛けて止めた。

公園に着いたのである。


きょろきょろ

……うーん、あいつはまだ来てないっぽいなぁ。とりあえず、自転車の鍵を掛けとくか。

さて、そんじゃあちょっと涼しそうな場所でも探しますかねぇ…。


「あー!やっと来たー!」

……この声は。

俺は声のする方向を振り返った。

すると、そこには…昨日見掛けた白い髪の少女がよく似合う白いワンピースと麦わら帽子を被っていて、青い海みたいに透き通った生意気な瞳をこちらに向けて、何処か興奮したように怒っていた。

ちなみに、俺の今回の装いは赤の長袖シャツと茶のジーンズである。

家族からは暑苦しいとの評価を頂戴していた。



「もー!私、待ったんだからねー!」

ぺちぺち…。少女は八つ当たりするように俺の腹を遠慮なく叩いてきた。

い、痛い…。


「…ちゃんと時間通りには来たと思うんだが」

「言い訳無用です!レディを待たせるなんて男として駄目なんですからね!」

どっかで聞いたような台詞だな。


「あー、はいはい分かった分かった」

「もー反省してないでしょー!」

彼女が不機嫌そうに責めてくる。


「そう、怒んなよ」

「怒ってない!」

なに、このめんどくさい生き物。

…まあいいか。


「んで、何して遊ぶんだよ?」

「もー話を逸らさないで!」

「…なでなで」

「触んな!」

ツンデレか。いや、ただのめんどくさい妹か。


「はぁ、暑い。とりあえず木陰で休むか」

「ちょ、ちょっと待って…」

なんか無視したら途端に寂しそうな顔してくるんですが。

試しに待ってやる。

すると、追い抜いて、木陰に座り、彼女はビッと指で自分の隣を指差してきた。

なるほど、そこに座れと。

俺は別にいじわるではないので素直にそこに座った。

どうせ暑いのは変わらないので。


あちぃー。

俺は腰につけたバッグの中から扇子を取りだし、それを使って扇いだ。

そしたらそれを見た少女が「あ、ずるいー!」と言って近くに寄ってきた。


ぱたぱた。

今の俺達の立ち位置は扇子、あおぐ俺、すぐ隣で「暑いね」等と言いながら笑う少女の構図である。

扇子が扇風機だったら絶対俺と少女の立ち位置は逆だっただろうな。俺はまだ小学生だった妹と扇風機の取り合いをしていた過去を思い出して強くそう思った。



…昨日。ありすと話した時、俺は直感で何となくこいつは友達がいなさそうだなって思った。だけど、それがどうしてなのかは俺にはさっぱり分からん。

転勤が多いのか。それとも学校で苛められてるのか。

何となく、後者っぽい気がする。何故そう思うのか分からないけれど何故かそれが正しいと分かる。


俺はあのとき、家族の言葉があったから立ち直れたが…こいつはそれがないと言っていた。

苛められているのなら助けてやりたいとは思う。だが、下手に介入すればありすはもっと孤立してしまうだろう。

上手くやれる方法があれば良いのだが…。


「うーむ。さっぱり分からん」

「いきなりどうしたの?」

「馬鹿が馬鹿なりに頑張ったら報われるかどうかが分からん」

「突然そんなこと言われても、意味がわからないよ」

「ですよねー」


ありすは完全に呆れ顔だ。

まあ、そりゃそうだよな。

いきなり訳の分からないこと言われても「なに?」って感じがするもんな。


ふむ…困ったな。現状だと何も出来ん…。

うーん…。

ぽん、ぽん、ぽん、かーん!

…ま、いきなり色々やっても失敗するだけだよな。

ありすにとってこれは大事なことだから、もっと慎重にやらないとどこぞのヒキニートみたいになっちまうかもしんねぇ。

そんな女の子を俺はあんまり見たくない。

例え、話が地味に合いそうであってもだ。


とはいえ、今日なにもしないと言うのもおかしな話だ。

というか、それが一番の悪手だろう。

ありすの問題を解決するにもしないにもありすとの関係を続けないとこの先のことなんざどうにもならん。

というわけでだ。


「ありす」

「なに?」

「散歩しないか?」

「散歩?」


「なんで?」と不思議そうに言うありす。しかも、その顔は何処か不満気だ。まあ、暑いしな。だけど、俺は気にしない。


「意外と風景観るだけでも楽しいもんだぜ」

「え~」

「なんだ?嫌か?」

「いや!」


すっごく分かりやすい意思表示をありがとう。「暑いから動きたくない!」ってのが顔からまる見えだぁ!やったね!


「そんなに嫌か?」


俺は敢えてそう尋ねる。

ありすは「分かってるくせに~」と憎らし気に俺の顔を睨み付ける。


「嫌よ!こんなに暑いのに外出たら暑くて死んじゃう!」


このクソ暑い夏に朝から外で遊ぼうだの言った君が言うのか…?

理不尽極まるぜ…。まあ、予想してなかったんだろうが。

でも…ちょっと考えたら分かるよね?

だけどまぁ…ありすは子供だしなぁ…。このくらい小さい時って、結構考え知らずなことあるし…。

しかも、ありすは言動から友達と遊ぶこともなかっただろうからこんな簡単なことにも気づかないほどに経験がなかったのかもしれない。


待てよ?だとしたらなんでこんな朝に俺を呼んだんだ?

ありすからすればあの日に出会った夜でもよかったはずだが…。


「…あの?」


俺は少し考え、驚愕の事実に気付いた。

もしかして…こいつ。俺との約束をかなり楽しみにしていたな?

やべぇ、こいつ本当に子供っぽい。遠足前の幼稚園児かって突っ込みいれそうになるが、そんなことはどうでもいい。

まさかありすが…あの毒舌辛口ワガママ外国系少女ありすが…俺との約束をそれほどまで楽しみにしていただと!?

滅茶苦茶可愛いじゃねぇか!


思えば、心当たりがたくさんあった。

俺が定時で来たとき、こいつは物凄く怒っていた。

だが、その表情は俺と話している内にすぐに消えていた。

しかも、俺が無視して行こうとしたら、寂しそうな声を出していた。

そんな…まさかこんな…。


「なに、ニヤニヤ笑ってるの?気持ち悪い」


いや、待てよ?

俺はまたゲラゲラ笑いかけたが少しそこで冷静になった。

俺は変わり者だ。もしかしたらこの論理には穴があるかもしれん。

もし穴があったとき、これをからかい半分に言ったら、ありすが超絶ウルトラバーサークモードになって、口も聞かなくなるかもしれない。


それは困る。俺はうちにいる妹との過去を思い出した。


「お兄ちゃんのバーカ!」(外で会ったら出会い頭に)

「洗濯物入れて畳んどいて」(家でゴロゴロしてたら突然)


あげくには妹の部屋に洗濯物を入れる引き出しがあるから畳んだ洗濯物入れようと部屋に入ったら


「勝手に部屋に入らないでって言ったじゃん!」


と言われて怒られた。


「ねぇ、ちょっと聞いてるの?」


ここまで思い出して俺は思った。もしかして俺がこのまま接するとあんなギャークソ娘みたいな妹になるのだろうか?

あれはあれで色々と苦労してるのも知ってるから俺は何にも言わずにやってるが…男に対してあんな奴のままになったら、ありすが可哀想なことになるかも?

いや、使い分けてくれれば問題ないかな?

俺とか家族とかに鬱憤だの愚痴だの言ってれば、問題ないか?

うん、問題ないよな!

だって、妹もあんなんで何とかなってるし!


というわけでだ。


「ありす」

「なに?」


なんか怒ってる?

まあいいか。


「散歩しようか」

「嫌」

「では、言い方を変えよう。涼しいところに行かないか?」

「…何処に行くの?」


食い付いたな?

フッフッフッ、やはり貴様も扇子だけでは物足りないと感じているようだな…。俺は高笑いしそうになるのをこらえて一つの場所を答えた。


「海」

あとがき


朝八時

ナレコ「…ほわぁ…。ねむ…」

実はありすと約束してから家に帰り、そのあと午前4時まで夜更かしやらかしていた。

そのため、実は物凄く眠かった。


主人公ナレコの性格。遅くまで寝ていたとしても基本的にイライラしない。

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