表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/100

最後の選択

「……お、おいおい。ここにきて一体何を言い出すんだよ」


 意外な提案に、俺が思わず驚いてしまった。


 しかし、ウェスタの表情は真剣だった。


「……ごめんね。今更こんなこと言い出して」


「あ、当たり前だろ……何考えてんだ」


「でも! ……君はこれからずっとこの世界で生きていくんだよ? それでいいのかい?」


 ウェスタは心配そうにそう言う。そして、紅い瞳は俺のことを見ていた。


 この世界……多くの人が苦しんでいて、未だに安定しないこの世界……


「……はっ。あのなぁ。転生前に戻るって、俺は引きこもりのニートだったんだぞ? 戻った所で、仕方ないだろうが」


「……でも、今はもう違うだろ?」


 ウェスタは強い口調で俺にそう言った。


 確かに……今は引きこもりではない。


 この世界にきて、俺は……自分でも言うのもなんだが、少なからず成長することができた。もちろん、剣術が使えるとか、魔術が使えるようになるとか、転生前に考えていた異世界的成長じゃなくて、精神的な成長……だと思う。


 そうなれば、元の世界に戻れば、多少は引きこもりよりはマシな人間になれるだろう……


 だけど……


 俺はウェスタのことを今一度見る。


「……っていうか、どうするんだよ? 俺は死んだんだろ? 蘇らせることもできるっていうのか?」


「……そうじゃない。僕はもう一度だけ、世界を再構成できる。君が元いた世界とそっくりの世界を創造して、その世界の住人として君も再構成する……こうすれば、君はほぼ、元通りって言えるだろ?」


「……っていうと、この世界は無くなるってことか」


「……そうなるね」


 ウェスタは申し訳無さそうに俺のことを見た。俺は思わず大きくため息をついてしまった。


「どうして、俺にそこまでしようとするんだ?」


「……最初に言ったじゃないか。僕はなるべくニト君の要望を受け入れた世界にしたい、って」


 そう言われて俺は最初のウェスタとの出会いを思い出す。あれから随分と経ったのだ。


 確かに、この世界は不安定で、未成熟、さらには理不尽だ。俺がもといた世界の方が断然、快適である。


 そうなると、俺の選択は……


「そんなの……決まっているだろ。俺の選択は――」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ