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神の選択 3

「……そうだ。イリア」


 ウェスタがいなくなった後、俺はすぐに我に帰る。


 そうだ……イリアがいなくなったのだ。すぐに探しに行かなくてはいけない。


 タルペイアが言った殉教という言葉……あれが現実にしてはいけない。


 俺は慌てて牢屋を出て、大聖堂に戻る。そして、大聖堂から飛び出した。


 大広間……先程タルペイアが街を案内した時に通った場所だ。


 俺は記憶を頼りにそのまま走る。


 転生する前はこんなに走ったことはなかった。


 ウェスタが言っていたこと……俺は人々が苦しむことを望んでいたのかどうか。


 確かに、転生前の俺は、名前こそ覚えていないが、酷い人生を送っていたことはわかっている。


 そして、あの暗く狭い部屋で、人々が不幸になればいいと思っていた。


 だから、ウェスタが言っていたことも間違っているわけではない。


 だけど……今は違う。


 俺は神になった。そして、神様気分で、この異世界を観察している……気になっていた。


 でも、この異世界で俺が観察してきた人たちは、皆転生前の俺よりも不条理な現実に立たされていた。


 それは、まぎれもなく、神となった俺が安易に世界を設定しようとしたからだ。


 もしかすると、その時に俺は世界の人々が不幸になることを望んでいたのかもしれない。


 だけど、今は違う。


 なぜなら、この世界でも不幸になってほしくない人がいる。


 俺が短いながらもその旅路を共にし、その旅を見守ってきた聖女イリア。


 彼女には、幸せになってほしい。


 それは、神としてではなく、1人の人間として、聖女という窮屈な立場の彼女にも氏わせになってほしいのだ。


 だから……


「イリア!」


 俺は走った。走りきった。そして、大きく肩を上下させながら、広場に着いた。


 そして、俺が目にしたのは……


「……イリア!」


 木に縛り付けられ、今にも、周りに火をくべられ、燃やされそうになっているイリアの姿なのであった。

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