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神の選択 2

「な……何を言っているんだ、ウェスタ……」


「簡単な話だよ。最初からやり直そう。君はイリアを酷く気に入ってしまったんだ。それは君が異世界に来てからの成長であり、同時に衰退でもある」


「ど、どういうことだ……俺は、イリアを……」


「救いたいんだ。イリアは純粋だったからねぇ。君にも優しかった。元の世界では君にそんな風に接してくれる存在は誰一人いなかった……だろう?」


 ウェスタの言葉を俺は……否定できなかった。


 俺は転生前は1人だった。誰とも関わらず1人で生きていた。


 そんな俺にも、イリアは普通に接してくれた。もちろん、イリア自身が不完全な存在だからこそ、そういうことができたのかもしれない。


「だけど……イリア以外を消すだなんて……」


「何か問題があるのかい? 別にいいじゃないか。イリアを残して後は全部燃やし尽くす……そして、今度はイリアの要望も取り入れて、僕達3人で新しい世界を作ろう。ね?」


 ウェスタは本気で言っているようだった。


 イリアの意見も取り入れて新しい世界を作る、そうすれば俺が作ったしまったこの不完全な世界もなかったことにできるのか?


「……本当に、それでいいのか?」


「悪いも何も、ニト君、僕と君は神だ。僕達が良いと思えば良いし、悪いと思えば、悪い。良いも悪いも僕達次第なんだから、悩むことなんて無いんだよ」


 俺はウェスタの方を見る。紅い瞳は、俺の解答を期待しているようだった。


「さぁ、ニト君。早くやり直そう」


「……悪い、ウェスタ。それはできない」


「……はぁ? なんで?」


 俺はギリギリのところで踏みとどまった。


 確かに、ウェスタの言うことも一理ある。こんな世界、やり直した方が良いのかもしれない。


 だけど……


「俺は今まで、イリアと、その回収対象達のことを見てきた。皆、俺が作った不完全な世界で精一杯生きていた……それなのに、そんな奴等の意見を無視して、神が勝手に世界を作り直すなんてのは……傲慢だ」


「傲慢……面白いことを言うねぇ、ニト君。でもそれは違う。神は傲慢であるべきなんだ。最初から傲慢でない神に、世界など創造できない……それでも、君はこの世界をやり直したくないという言うんだね」


 ウェスタは呆れ顔で俺にそう聞いてきた。俺はゆっくりと首を縦にふる。


「そうかぁ……フフッ。まぁ、いいさ。大広場に行ってイリアを助けるといい。どうせ、遅かれ早かれ、君もイリアも、こんな世界はやり直した方がいい、って思うようになるさ」


「何? お前、ウェスタ……」


 と、俺が先を言い終わらない内に、ウェスタの姿は俺の前から消えていた。

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