表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/100

嫉妬する聖女 5

「いかがでしたか? ウェスタの聖女?」


 演説が終わり、大部分の群衆が大聖堂から去った後で、タルペイアは俺とイリアに話しかけてきた。


「タルペイア殿……貴方は正真正銘の聖女のようだ」


 目を輝かせてイリアはタルペイアにそう言う。


「ええ、そうです。ウェスタの聖女も同じことができるのでしょう?」


「え……あ、いや、私はああいうことは……」


 そう言うとタルペイアはわざとらしく呆れたように大きくため息をつく。


「そうですか……やはり、ウェスタ教では人々を救うということはしないのですね……」


「そ、そんなことはない! ウェスタ教では救いは女神から与えられるもので……自ら与えるものではないから……」


 イリアがそう言うと、タルペイアはまるで侮蔑した様子で、イリアを見る。


「それは詭弁です。ウェスタ教はそういって、神の奇跡を起こせないから、そういってごまかしをしているだけなのです」


 真正面から否定を食らってイリアは悲しそうに俯いてしまった。


 さすがに見ているのが可哀想に思えてきてしまったので、俺は助け舟を出すことにした。


「なぁ、タルペイア。今お前が奇跡で悩みを解決した人たち、初めて会ったのか?」


 俺の質問にタルペイアは動じることもなく、首を横にふる。


「いいえ、彼らはニト教の信者です。大聖堂に何度も悩みを打ち明けにきていました。ですから、ワタクシとは親しい間柄です」


「なるほど。じゃあ、アイツラもさっきみたいに、袋にそれこそ、大量の金を入れてきたわけか」


 俺がそう言うと、タルペイアは嫌そうな顔で俺を見る。やはり、そこはあまり突っ込まれたくない部分だったようである。


「……我らが創造主ニト。あれはアナタへの供物です。まるでワタクシが……金銭をもらっているような言い方はやめて下さい」


「なんだ? 事実をありのままに言ってはいけないのか?」


 俺がそう言うとタルペイアはキッと俺を睨んだ。その視線は、とても聖女とは思えないほどの鋭いものだった。


「……いいでしょう。ワタクシがどれほどこのアルクスの街にとって必要とされている聖女か、お見せいたしましょう」


 タルペイアはそう言って、俺とイリアに向けて妖しげな笑みを浮かべたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ