表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/100

神と人と

 それから、俺とウェスタはしばらく歩き続けた。


 ウェスタの言う通り、神である俺は疲れや喉の乾き、空腹も感じなかった。


 そして、睡眠さえも取る必要も感じない。


 果てはイリアに対して、人間的に欲情さえ感じなくなった。


 寝ているイリアの寝込みを襲おうとか、そういうのは一切考えなく成ってしまったのである。


 ここにきて今更であるが、自分が人間ではなくなってしまったのだと、改めて実感できた。


 イリアの方は、時折疲れを見せていたが、順調に旅を続けていく。


 俺が疲れを見せないことにもあまり不信感を表すこと無く、俺と一緒にいつづけた。


 そして、鎧騎士のいた城から離れて、一週間ほど経った時のことであった。


 その日の夜、いつものように俺とイリアは野宿していた。


「……なぁ、ニト」


 と、ランタンを見つめていたイリアが俺にふと話しかけてきた。


「ん? なんだ?」


「……お前、辛くないのか? この旅」


 不思議そうな調子でイリアは俺に訊ねてくる。


 俺としてもどう答えれば良いのか少し困ってしまった。


「そうだなぁ……俺は別にイリアについて着ているだけだし……辛くはないかなぁ」


 俺がそう言うと、イリアはキョトンとした様子で俺を見る。そして、なぜか少し嬉しそうに微笑んだ。


「な、なんだよ……」


「……不思議なヤツだと思ったんだ。別に付いてくる義務なんてないのに……お前はずっと私に付いてくる……私のことを気味悪がる様子もない」


「え? 気味悪がる?」


 すると、イリアは目を細めて、煌々と燃えているランタンの炎を見る。


「……女神の声が聞こえる聖女……そういえば聞こえは良いが、その実は、人が聞こえない声が聞こえる不気味な存在だ。皆私を気味悪がっていた。神祇官様でさえも……」


 そして、イリアは悲しそうな顔をしたあとで、無理に微笑むように俺を見る。


「……だが、お前は違う。私に対して聖女としてではなく、普通の人間として接してくれる……だから、私はお前のことを不思議なやつだと思うのだ」


 ……違う。


 イリアがこんな苦しい思いをしているのは俺のせいだ……それなのに……


「ああ、すまない。変な話をしてしまった……気にしないでくれ」


 先程までの話を誤魔化すように、イリアはそのまま立ち上がった。


「……明日も早い。私はもう寝る」


 そういってイリアはそのまま横になった。


 程なくして小さな寝息を立ててイリアは寝てしまったようだった。


「ふふっ。大分信頼されたようだね。創造神様」


 そして、聞こえて来た声。俺はゆっくりと振り返った。


 そこには、邪悪な微笑みを湛えた白髪黒衣の女神が立っていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ