君と僕の世界
「……で、次はどうするんだ?」
俺はイリアに訊ねる。イリアは少し考え込んだ後で、俺の方に顔を向ける。
「……次の巡礼地に向かう。それが私の使命だからな」
イリアの顔はあまり浮かない感じだった。やはり鎧騎士のことがどうにも気にかかっているようだった。
「……そうか。お前がそういうなら俺もそれでいいと思うぜ」
俺の言葉を聞いてイリアは少し安心したようだった。
それにしても気になるのは……ウェスタのことである。
なぜウェスタはいきなり鎧騎士を火だるまにしたのか。
確かに、あのままだとイリアに死の危険が迫っていたから、ウェスタがやったことは間違いではない。
しかし、ウェスタの性格を考えるのなら、あまりこの世界に干渉するつもりはないはずである。
それなのに、鎧騎士を火だるまにするという暴挙に出た……俺にはどうしても納得できなかった。
「……一体何を考えているんだよ。ウェスタ」
「どうした? ニト。行くぞ」
「え? あ、ああ。すまない」
既にイリアは先を行っていた。俺は慌ててその後を付いて行く。
「しかし……なんだな。私は、実は今少し嬉しいのだ」
と、イリアはいきなりなぜかそんなことを言い出してきた。
「え? なんで?」
俺は驚いて思わず聞き返してしまう。すると、イリアは少し恥ずかしそうにしながら俺を見る。
「その……お前といると、安心するのだ。今まで教会では、私はいつも1人だったから……もちろん、女神の存在を信じてはいたが……目に見えないとなんとなく心細い」
そういってイリアは俺を見る。
「もちろん、お前は自分のことを神と自称するような奴だが……一緒にいると安心してしまうのだ」
恥ずかしそうにそう笑うイリア。
ああ……そうか。イリアはやはり普通の女の子なのだ。
こんな子を聖女なんて言ってこんな旅に送り出すなんて……やっぱりこの世界は――
「間違ってなんかないよ。これが、僕と君の世界さ」
と、いきなり聞こえて来た声。
俺は思わず周囲を見回す。
「ん? どうした?」
「え……今、声が……」
イリアはキョトンとしている。どうやら、俺にしか聞こえなかったらしい。
「フフッ。せいぜい楽しくイリアと旅してね。ニト君」
どことなく邪悪さを感じさせるような感じで、ウェスタの言葉は聞こえ、そのまま聞こえなくなったのだった。




