憤怒の騎士 13
そして、次の瞬間、気付くと俺は動けるようになっていた。
見ると、すぐ側では、鎧騎士が炎に包まれて燃えている。
「……な、なんだ……これは……」
と、イリアが目の前で起きていることが信じられないという様子で驚いている。
「あ……イリア、これは……」
「お前が……やったのか?」
イリアは信じられないという顔で俺を見る。
その緑色の瞳は激しく動揺しているのがわかる。
目の前で起きていることを受け入れられないのだ。
「あ……違う。俺じゃない」
「では、誰が?」
「……ウェスタだ」
思わず俺は言ってしまった。あまり考えもせずに、イリアにウェスタの名前を言ってしまったのだ。
しかし、イリアは驚くどころか、そのまま、炎に包まれている鎧騎士に近づいていく。
「お、おい! 危ないぞ」
そして、その場で倒れている鎧騎士に向かって跪く。
「……お前は、どうしたかったのだ? なぜ、怒っていたんだ?」
イリアが鎧騎士に訊ねる。鎧騎士はなんとか身体を動かそうとするが、既に瀕死の状態なのか、動けないようだった。
「お、おい。なぁ……聖女イリアは、殉教した聖女だった……これは、真実じゃないのかよ?」
俺が思わず鎧騎士に訊ねると、鎧騎士は苦しそうにしながらもゆっくりと首を横に振る。
『……チガウ。イリアハ……オレガ……オレガ、サシダシタンダ……アノ……メガミニ……』
鎧騎士は苦しそうにしながらも、なんとか声を振り絞っていた。
しかし、鎧騎士がそう言った途端、炎は一層強く燃え上がり、それと同時に鎧騎士の鎧はバラバラになってしまった。
「……一体、何がどうなっているのだ」
イリアは悲しそうにボソリとそう呟いた。
「イリア……」
俺は何もイリアに言葉をかけることができず、ただ、そうイリアの名前を呟いたのだった。