異世界創造 4
「さて……後は何だ?」
正直、さっさと世界を創造してほしかった。いい加減この真っ暗な空間にずっといるのは、神の立場にいるのだとしても、少し堪えるのである。
「そうだねぇ……あ。そうだ。この世界はどういう状態なんだい?」
「え? どういう状態って?」
「だから、平和なのかい? それとも、戦争状態にあるのかい?」
俺はウェスタの質問に思わず戸惑ってしまった。
「え……だって、お前、さっき平和になるように差別は駄目だ、って言ってたじゃないか」
「それは平和になるために、って話さ。差別がなくても、平和ではない可能性だってあるよ。食料不足や、国同士の領土の拡大を求める戦争……そういうことが起きているのかって聞きたいんだ」
俺は納得して、少し考える。
中世ヨーロッパといえば、俺の適当なあまり多くない知識では毎度戦争していた記憶があるが……
「まぁ……そうだなぁ。とりあえず、過去には大きな戦争が何度かあったってことにしないか?」
「過去に? つまり今は戦争がないってことかい?」
「ああ。でも、戦争の爪あとは残っていて、各地にそれが形として表れている……なんだかそれっぽいだろ?」
俺がそう言うとウェスタはまたしても少しうーんと難しそうに唸ったが、小さく頷いた。
「わかった。そういうことにしよう。つまり、今は平和なんだね?」
「あ、ああ。平和だ。とりあえずはな」
なんとも自分でもいい加減な設定だとは思う。しかし、それっぽい感じであるので、個人的には明暗だと思った。
ウェスタがホワイトボードに決定事項を書き込んだ。そろそろ大方の世界観設定は完了したはずである。
「さて……後一つだけ、設定しておく必要があるんだけど、これは僕からニト君に提案がある設定なんだ」
「提案? なんだよ」
「僕は考えたんだけど、この世界の中心として、この世界が創造された時の神話を創っておく必要があると思うんだ」
少し得意げな感じでウェスタは俺にそう言ったのだった。
「神話? なんで?」
「簡単さ。神話を創っておけばきっとこの世界の人間たちはそれを元に宗教を作る。宗教は世界の精神的中心となる重要なものだよ」
ウェスタはそういってニッコリと俺に微笑む。
「中世ヨーロッパでは実際神に対する信仰が篤かったんだろう? だったら、宗教が成立するように神話は絶対に創っておくべきだよ」
ウェスタがあまりにも自信満々でそういうので、俺はただ納得することしかできなかった。
「そ、そうか……まぁ……そうだなぁ」
宗教……俺にはあまりピンと来なかった。
しかし、それはつまり俺とウェスタが神として崇められるということ……あまり悪い気はしないような気がする。
「……わかった。神話は創っておこう」
「よし。じゃあ、僕とニト君、二人がこの世界を創った、的な神話が残るように設定しておくよ」
そういってウェスタはホワイトボードに文字を書き込んだ。