憤怒の騎士 7
「……って。なんでコイツは寝てんだよ」
それから夜になって、城に行こうとした……その時だった。
イリアは完全に爆睡してしまっていた。しかも、かなり幸せそうな表情で。
「はぁ……あの鎧騎士の怒りの原因はどうすんだよ……」
かといって、叩き起こしてしまうのも躊躇われるレベルの幸せそうな寝顔だった。
さすがにここまで幸せそうな寝顔をしているヤツのことを起こしてしまうのは可哀想な気がする……
「……仕方ない。俺だけでも行ってみるか」
本当はなんで俺が行くのか疑問だったが、俺自身、あの鎧騎士が一体何者なのか気になった。
アイツが眠っているかも気になったし、一体何に怒っているかも気になっていた。
俺は城の中に潜入すると、そのまま玉座の間まで一直線で進んだ。
玉座の間に続く扉は相変らず微妙に開いていた。俺はその隙間から覗くようにして中を見る。
荒れ果てた部屋の中に2つの玉座が見える……そして、やはり片方の玉座にはあの鎧騎士が座っていた。
「なんだ……アイツ、まだいるじゃないか」
「そうだね。一体いつ眠っているのか気になるところだね」
俺は瞬時に隣を向く。すると、そこには白髪黒衣の少女が俺と同じように隙間から部屋の中を除いていた。
「あ……お前、ウェスタ……」
「ふふっ。やぁ、ニト君。大変だねぇ。イリアは勝手に眠ってしまった。それなのに、ニト君1人でこうして改宗対象の様子を見に来た……イリアに情が移ってきたのかな?」
ニヤニヤしながらウェスタはそう言う。
「ち、ちげぇよ……放っておけないんだよ。アイツのこと」
「それを情が移ってきたと言うんだよ。はぁ、まったく神ともあろう存在が……まぁ、ニト君がしたいようにするといいさ」
その言葉を聞いて俺はふとウェスタを見る。
ウェスタも、キョトンとした様子で俺のことを見てくる。
「ん? なんだい。ニト君」
「……お前、あの鎧騎士のこと、何か知っているんじゃないか?」
俺がそう言うとウェスタはわざとらしく考えこむように唸った後、ニンマリと微笑んで大きく頷いた。
「うん。知っているよ」
「……やっぱりな。で、アイツはなんで怒っているんだよ?」
俺がそう訊ねると、ウェスタはなぜか少し恥ずかしそうに笑った。
「あー……いやね。なんというか、間接的には僕のせいというか……そのせいで彼は怒っていると思うんだよね」
困ったようにウェスタはそんなことを、さらっと言ってのけたのだった。