憤怒の騎士 3
それから俺とイリアは城の中をしばらく探索した。しかし、どこもただ荒れ果てた部屋があるだけで、誰かが住んでいるような気配は感じられなかった。
「……どうやら、ここが最上階みたいだな」
上に続く階段がないことを確認してから、俺はそう言った。
「改宗対象は絶対ここにいるはずだ……教会の情報が間違っているはずがない」
イリアは不安そうにそう言う。
「まぁ、ここの探索を終えてから考えようじゃないか」
俺がそう言うとイリアもとりあえず同意したのか、そのまま探索を開始した。
最上階はこれまでの階層よりもあれ具合がひどかった。
「え……お、おい。イリア、あれ……」
俺が立ち止まって指をさすと、イリアも嫌そうな顔をした。
見ると前方に、壁にもたれかかるように白骨化した死体が見えたのである。俺とイリアはなぜか一言も会話せずに、身長にその前を通り過ぎた。
「……なんだよ。あれ。この城に何があったんだよ」
「……教会からの情報では、かつてこの城では戦いがあった……それだけしか私にもわからない」
相変らずイリアも不安そうなので、あまり頼りにならなかった。
こんな時にウェスタがいれば詳しいことまでわかるのだが……気まぐれな女神は現れる気配すらなかった。
「……しかし、巡礼の旅を中止することはできない。とにかく進むぞ」
そういって嫌そうな顔をしながらも、イリアは歩き出した。俺もその後に続く。
しばらくすると、前方に今度は大きな扉が見えてきた。今までの階層にはなかった扉である。
「……もしかすると、あの先に城主がいるのではないか?」
イリアは嬉しそうにそう言う。しかし、俺はなんとなくだが、嫌な予感がした。
「……イリア。もう一つ聞くが、この城で戦いがあったのって、いつ頃の話なんだ?」
「何時頃? さぁ……そんなことはどうでもいいだろう。改宗対象がこの先にいるのなら行くしか無い」
「あ、おい! イリア!」
俺の質問に対する回答は曖昧なままに、イリアはその大きな扉の取っ手を掴むと、力任せに思いっきり開け放ったのであった。