異世界創造 3
「うーん……そうだ。技術力とかはどうなんだ?」
俺は思い出したようにそう言った。ウェスタはポンと手を叩いた。
「え? 中世ヨーロッパ程度のものでいいんじゃないかい?」
「いやいや。魔法があるんだよな? だったら、それを利用するだろうから、かなり技術レベルは高いんじゃないか?」
俺が少し勢い強くそう言ったにも拘らず、ウェスタはあまり乗り気ではないようであった。
「なんだ? ダメか?」
「うーん……でも、そうなると中世ヨーロッパって世界観である必要がなくなっちゃうんじゃないかな?」
「あ……言われてみれば、確かにそうか」
「でしょう? そうなると、魔法が存在することが却って世界観を崩しちゃいそうだなぁ……」
さすがにウェスタの言葉に俺は焦った。異世界なのに魔王も魔物もいない。ましてや、魔法もないのでは、これはもう俺が今まで生きてきたくそったれの世界と対して変わらないではないか。
「あ……わ、わかった! 魔法は……使用を限定されていることにしようぜ?」
「使用を……限定?」
「ああ。特別な階級の人間が、一定の時にしか使えない……そうすれば、魔法によってあまり技術レベルが発達しないのも納得できると思うぞ?」
しかし、今度もウェスタはあまり納得できないようだった。
「な、なんだよ。ダメだっていうのか?」
「……ニト君。つまり、特権階級にしか魔法は使えないってことかい? そうなると、今度は階級的差別を招いてしまうんじゃないかな?」
「え……そ、それは仕方ないだろ? 魔法を使えるヤツは特別なんだ。そこに階級的な違うがあっても仕方ねぇよ」
俺は少し強い調子で言ってしまった。
そもそも、それで階級的な格差が生まれたからって、それは魔法を使えないヤツが悪いんだ……
能力が無いやつは、何をやってもダメ。
それは俺が身を以てよく知っていることだ。
「ニト君? 大丈夫かい?」
「え? あ、ああ……すまん。ちょっと嫌なことを思い出した……」
そう言うと、心配そうな顔でウェスタは俺を見た。
「……うん。わかった。さすがに魔法もなくしてしまったのでは、ニト君が生きていた世界とあんまり変わりがなくなっちゃうからね……じゃあ、魔法はそういう感じで設定しよう」
そういって、ウェスタはホワイトボードに「魔法=特権階級の独占」書き込んだ。
俺はそれを見て、少し笑ってしまったのだった。
「ん? どうして笑うんだい?」
ウェスタが不思議そうに俺のことを見る。
「いや……こんな感じで差別の原因ができちゃうんだと考えると、神様のきまぐれってのは恐ろしいなぁと思ってね」
俺はまるで神様気取りにそういった。ウェスタは少し苦々しく笑う。
「……まぁ、世界なんてのはそういう風にできているのかもしれないね」