二人の始まり
「よし。なんだかこの食べ物を食べると元気が出てきたぞ。さて……行くとするか」
「え……行くって、次の巡礼地にか?」
「ああ。私の使命だからな。お前はどうする?」
イリアにそう言われて俺は思わず口篭ってしまった。
ウェスタの言う通り、俺は神様としては失格で、あまりにもイリアに固執しているのかもしれない。
でも、この聖女のことはどうにも放っておけないのだ。
なんとなくだけど、イリアは、転生する前の俺によく似ている……そんな気がしてならないのである。
「……付いて行っていいのか?」
俺がそう言うと、イリアは意外そうな顔で俺のことを見た。
「もちろんだ。お前のおかげで私は命拾いしたのだ。確かにお前は邪教の信徒かもしれないが、ウェスタの聖女として命の恩人には敬意を払うつもりだ」
そういってイリアは俺に手を差し出してきた。
その光景はまるで、天使が手を差し伸べてきてくれている……そんな風に俺には見えた。
「……わかった。じゃあ、よろしく頼むよ。聖女様」
そういって俺はイリアの手を取る。
「ああ。こちらこそ。邪神の名前を持つ者よ」
イリアも嬉しそうに俺に微笑んだのだった。