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怠惰の森 7

 それから、どれくらいの時間が経っただろうか。


 ランタンはウェスタが言ったように、まるで魔法の炎のように、消えることなく煌々と燃え続けている。


 俺はずっとイリアのことを見ていた。


 イリアは、石になってしまったかのように、座ったまま動かなかった。


 時折、本当に動かなくなってしまったんじゃないかと思って心配になるが、俺にはイリアが死んでしまっているのではないことはわかっていた。


 それは、俺自身が中々死ねないことを知っているからだ。


 なにもせず、ただ暗い部屋の中で過ごすだけ……何度自ら死ぬことを選択しようとしたことか……それでも、死ぬことさえ許されなかった。


 だから、目の前で同じようにうずくまったままの、イリアが簡単には死なないことを俺は知っているのだ。


 もちろん、それでも心配にはなったけれども。


 そして、イリアがずっとうずくまったままで、どれほどの時間が経っただろうか。


「……お前。まだ、居るのか」


 イリアが俺に背中を向けたままでそう訊ねて来た。


「ああ」


 俺は短くそう返事する。


「……どれくらい時間が経ったんだ。私は……いつからここにいるんだ?」


「さぁ……生憎、俺も把握していないんでね」


 すると、イリアはこちらに振り向いた。


 綺麗な緑色の瞳は生気無く淀んでいて、頬も痩せこけてしまっている。


「……もう何日も食事していない……でも、食事するのも面倒なんだ……もう何もしたくない」


「……そうか。じゃあ、もう死ぬしか無いな」


 自分でも驚くほどに冷酷なことを俺はイリアに言った。


 しかし、イリアは同様することなく、ただ、俺のことをその生気のない瞳で見ている。


「……お前は、私を助けようと思っているんじゃないのか?」


「え……ああ、もちろん、助けたいと思っているけれど……お前がここから出たくないのに、無理やりそれを連れ出すのは、どうなのかなぁ、って……」


「……私がお前の目の前で餓死しても……それでもお前は私のことを見ているだけのつもりなのか?」


 イリアの質問に俺は思わず「ああ」と言ってしまいそうになって、思わず俺は驚いた。


 俺は一体、何を言っているんだ。


 そんなはずはない。


 今直ぐにでも、俺はイリアを外に連れ出すべきなのだ。それなのに、俺は今までずっと、イリアに何もせずにただ見ているだけだった。


 なにもしないでただ過ごしているだけ……それこそ、神として転生する前と同じように……

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