異世界創造 2
「はぁ? 考えてないよ。魔王、ダメなのか?」
「ダメだよ。いいかい? これから世界を作るんだよ? それなのになんでその世界に悪いヤツがいること前提で創るんだい?」
「あ……そ、そうか」
言われてものすごく恥ずかしくなった。
「異世界=魔王」……あまりにも短絡的すぎるではないか。
「もちろん、世界を創った結果として悪い輩がでてきてしまうのは仕方ない。だけど最初から悪い存在がいるのはどうかと思うなぁ」
「……わかったよ。魔王は、なしでいいよ」
俺が少しすねたようにそう言うと、なぜかウェスタは心配そうに俺の事を見た。
「あ……でも、ニト君が魔王を作りたいっていうならいいんだよ?」
「……は? なんだよ。さっきはダメって言ったじゃないか」
「いや……よく考えれば僕は君のおかげでこの世界の神様として存在できるんだ。それなのに、創造主である君に何か物を申すなんてあまりにもおこがましいんじゃないかな、って……」
申し訳無さそうにそういう褐色肌の美少女。
そんな風に言われると、逆にこっちが悪いことをしたように思えてしまう。
「……いや、別にいいよ。俺、世界を作るってわかんねぇし。それにお前も神様なんだろ? だったら、俺とお前でよく話し合って世界を創ろうぜ。俺も、前の世界で生きていて何度も思ったぜ? この世界、神様ちゃんと考えて創ったのかよ、って」
俺がそういうと、落ち込んだ顔をしていたウェスタは少し笑顔を浮かべる。
「ニト君……」
「ま、とりあえず、魔王はなしだ。こんな感じでどんどん考えていこうぜ」
「……うん!」
嬉しそうに頷く美少女は、なんとなく、小動物のような印象を俺に与える。
「で、まずは何を考えればいいんだ?」
俺はウェスタに訊ねる。ウェスタは腕組みをしてうーんと唸った。
「そうだねぇ……まず、世界観のモデルが中世ヨーロッパだってことはわかったよ。後は……そうだ。そこに住む人々だね」
「人々?」
「うん。ほら。君が生きていた世界だって、色んな人種の人間がいたでしょ?」
「ああ。そういうことか……そうだなぁ……」
俺の頭にはやはり、異世界ということで、亜人種とかそういうイメージが浮かんだ。
しかし、よく考えれてみれば、今創ろうとしている異世界には魔物はいないのだ。
それなのに亜人種がいるってのは、なんだか少し矛盾している気がする。
「うーん……人種ねぇ。でもよぉ。人種を増やすと差別とか起こって問題があるんじゃないか」
俺がそういうと、ウェスタは意外そうな顔で俺を見た。
「な、なんだよ。その顔は」
「いや、さっきとりあえず魔物を出そうって言った君から、まさか人種差別なんて言葉が出てくるとは思わなかったから……」
「なっ……あのなぁ。俺は最初亜人種とかもだそうって思ったんだよ。エルフとか、ドワーフとか……でも、お前がさっき魔物は出さないって言ったから、俺はそれに合わせた方がいいと思ったんだよ」
「ああ、なるほど……でも、確かに君の言うとおりだ。むやみに人種を増やすのは差別につながるね……よし。この世界の人種は1つに統一しよう」
すると、ウェスタはパチンと指を鳴らした。すると、目の前にいきなりホワイトボードが現れた。
「決まったことは、一応全部書きだしておいた方がいいと思ってね」
ウェスタはそのまま黒いマジックペンでホワイトボードに「魔法が存在する世界」「魔王や魔物はいない」と続けて書いた。
そして最後に「人種=一種類に統一」と書き込んだ。
「さて……それじゃあ、次は何を考えようか」