表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/100

強欲な神父 5

「あー! 神父様だ!」


 教会から十分ほど歩くと、小さな村が見えてきた。


 そこへ着くなり、大勢の子どもたちが、神父を取り囲む。


「おお、元気にしていましたか? ほら、お菓子ですよ」


 神父は優しげな顔で全員に菓子らしきものを配っていた。嬉しそうな笑顔で子供達は菓子を頬張っている。


「村長さんはお家にいるかな?」


「うん! こっちだよ!」


 そういって神父は子どもたちに手を引かれていってしまった。


「……すごい人気だな」


「フンッ……どうせ、子どもたちも騙しているにきまっている。アイツは邪悪な人間なんだ」


 不満気にそういうイリア。


「いいえ。私は子羊達を騙していたりしません。彼らは私にとって何よりの宝ですから」


 神父はそういって子どもたちに取り囲まれながらも歩き出した。その後ろをイリアと俺、そして、ウェスタが付いて行く。


 神父は既に村長らしき人物の家に入っていた。


「ああ……神父様……」


 村長は神父が現れるなり、神に祈るように両膝をついた。


「やめてください。ほら、どうか立ち上がって」


「いえ……アナタは私達にとって神様です……」


 そういって村長は祈り続けている。神父の方は嬉しいというよりも本気で困っているという感じだ。


「さぁ。これは、神の恵みです」


 そういって神父は村長に小さな革袋を手渡した。


「ああ……ありがとうございます。ありがとうございます」


 村長は何度も頭を下げていた。


 そして、神父は大勢の村人に見送られながら村を出た。


「あれが、私の子羊たちです」


 それからしばらく経ってから、神父は口を開いた。


「彼らは私が来るまで、その日食べる食料さえも困る人達だった。だから、私は、神を冒涜することになっても、あの子羊達を救ってやりたかったのです」


「……なんだ。貴様、神を気取ってでも居るのか」


 鼻を鳴らして馬鹿にした感じで、イリアはそう返す。


 しかし、神父は険しい顔のままだ。


「聖女様。アナタ、巡礼の旅の途中なのでしょう。その装備を見ればわかります。アナタも見たでしょう。ニト教の信仰地域が如何に苦しみを受けているか、を」


 神父は強い口調でそう言った。イリアは少し困ったような顔をしたが、あくまで神父を馬鹿にした体で見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ