強欲な神父 5
「あー! 神父様だ!」
教会から十分ほど歩くと、小さな村が見えてきた。
そこへ着くなり、大勢の子どもたちが、神父を取り囲む。
「おお、元気にしていましたか? ほら、お菓子ですよ」
神父は優しげな顔で全員に菓子らしきものを配っていた。嬉しそうな笑顔で子供達は菓子を頬張っている。
「村長さんはお家にいるかな?」
「うん! こっちだよ!」
そういって神父は子どもたちに手を引かれていってしまった。
「……すごい人気だな」
「フンッ……どうせ、子どもたちも騙しているにきまっている。アイツは邪悪な人間なんだ」
不満気にそういうイリア。
「いいえ。私は子羊達を騙していたりしません。彼らは私にとって何よりの宝ですから」
神父はそういって子どもたちに取り囲まれながらも歩き出した。その後ろをイリアと俺、そして、ウェスタが付いて行く。
神父は既に村長らしき人物の家に入っていた。
「ああ……神父様……」
村長は神父が現れるなり、神に祈るように両膝をついた。
「やめてください。ほら、どうか立ち上がって」
「いえ……アナタは私達にとって神様です……」
そういって村長は祈り続けている。神父の方は嬉しいというよりも本気で困っているという感じだ。
「さぁ。これは、神の恵みです」
そういって神父は村長に小さな革袋を手渡した。
「ああ……ありがとうございます。ありがとうございます」
村長は何度も頭を下げていた。
そして、神父は大勢の村人に見送られながら村を出た。
「あれが、私の子羊たちです」
それからしばらく経ってから、神父は口を開いた。
「彼らは私が来るまで、その日食べる食料さえも困る人達だった。だから、私は、神を冒涜することになっても、あの子羊達を救ってやりたかったのです」
「……なんだ。貴様、神を気取ってでも居るのか」
鼻を鳴らして馬鹿にした感じで、イリアはそう返す。
しかし、神父は険しい顔のままだ。
「聖女様。アナタ、巡礼の旅の途中なのでしょう。その装備を見ればわかります。アナタも見たでしょう。ニト教の信仰地域が如何に苦しみを受けているか、を」
神父は強い口調でそう言った。イリアは少し困ったような顔をしたが、あくまで神父を馬鹿にした体で見ていた。