強欲な神父 4
「……は?」
俺がキョトンとした顔をすると、神父はイタズラっぽい顔で俺を見る。
「フフッ。もちろん、嘘です。そんな紐はありませんよ」
「え……ああ」
「その反応を見るに、アナタはニト教の信者ですね。そうです。ニト教の信者に言ってもこれを本気で天国に繋がる紐だと思ったりしませんよ。でも……ウェスタ教の信者さんは違うんですよね」
そういって神父はイリアを見た。イリアは憮然とした態度で神父を見ている。
「つまり、君は、これをウェスタ教の信者に売りつけているってことかい?」
いきなりそう訊いてきたウェスタに面くらいながらも、神父は優しく肯定の頷きを返した。
「ええ。皆さん、喜んで買ってくださいますよ。これを買えば本気で天国に行けると思っていらっしゃるようですから」
「……決まったな。貴様は罪人だ。聖女の名において、いまここで私が断罪してやる」
と、イリアが立ち上がり、レイピアを抜いていた。
しかし、神父は動じることはない。
「……なるほど。いいでしょう。では、この哀れな神父の最後の願いを聞いてくれませんか?」
そう言われてウェスタは怪訝そうに眉を潜めたが、ゆっくりと腰元に剣を収めた。
「……ああ。いいだろう。ウェスタの女神は寛大だ。貴様の言うような神の奴隷を生む教えではないことを、私が証明してやる」
「ありがとうございます、聖女様。では……行きましょうか」
「何? 行く? どこかへ逃げる気か?」
イリアがそう言うと、神父はニッコリと微笑む。
「いいえ。可愛い子羊達のところへ、ですよ」