強欲な神父 3
教会の中はこんな人里離れた場所にあるにも拘らず、ウェスタ教の大聖堂に劣らないレベルで美しい作りだった。
「……なるほど。信者から巻き上げた金をこうやって豪華な作りに利用しているというわけか」
イリアがそう言うと、前方に立っていた神父はイリアの方をジッと見る。
「ええ、そうです」
と、神父は、イリアが一番望んでいた言葉をあっさりと口にした。それを聞いてイリアはニヤリと微笑む。
「フンッ……やはりか。自分で認めたな。では、そんな神への冒涜行為は今すぐやめ、ウェスタ教に改宗しろ」
「……いえ、それはできません」
「貴様……ウェスタの聖女である私の改宗命令に逆らうのか!」
そういってまたしてもウェスタは腰元の剣を握る。神父はそれを見て、大きくため息をついた。
「……なんだ。私を挑発しているのか?」
「いいえ。聞いたとおりだと思いましてね。ウェスタ教では若い娘を洗脳し、神の奴隷にするという話の」
それを聞いてウェスタはさすがに肩を震わせていた。既に腰元の剣を掴む手には血管が浮き出ている。
「ま……待てよ、おっさん」
さすがに俺は黙って入られなかった。
神父は俺の方に顔を向ける。
「おや……あなた方は?」
「え……あ、ああ。えっと……聖女様のお供的な……」
「……そうなのですか?」
神父がそう訊くと、今にも人を殺しそうな眼をしているイリアは何も言わずに近くにあった椅子に座った。
「なるほど。で、何かお話ですか?」
「え、えっと……おっさんは結局、信者を騙して金儲けしているのか?」
思わず単刀直入に聞いてしまった。ウェスタが白い眼で俺のことを見ているが……俺はこんな状況に対応できるほど大人ではない。
大人だったらニートではなかったはずである。
「ふむ……そうですね。騙している、ともいうことが出来るかもしれません」
そういうと、神父は懐から何かを取り出した。
それは一本の細い紐だった。
「……え。なにそれ?」
俺が訊ねると神父はニッコリと微笑む。
「これは、紐です。天国に繋がる紐なのです」