異世界創造 1
「では、ニト君。さっそくだけど、世界の創造に取り掛かろうか」
間髪入れずに、ウェスタは俺にそう持ちかけてきた。
「さっそくって……そもそも、世界の創造ってなんだよ? ウェスタは神様なんだろ? だったら、一人でやればいいじゃないか?」
俺がそう言うと、ウェスタは大きくため息をついて、やれやれという風に首を横に振った。
「あのねぇ……僕は神様だけど、創造はできないの。この世界を作ったのは君であって、僕はその世界に居るだけ……というか、宿っただけなんだ。だから、君にどんな世界にしたいか考えてもらわないと、僕は何もできないんだよ」
「へぇ……なるほど」
「もちろん、君の希望があればできるかぎり努力はするよ。あ、でも、あんまり自分勝手な都合で世界を作るのはやめた方がいいよ」
「え? どういうことだ?」
「君はあくまで創造主であって、物語の主人公じゃないんだ。創造主というのは、いわば僕と同等の立場の存在、つまり、神様だね。だから、例えば、世界に存在する女の子全てが自分のことを好きなるとか、自分が世界で一番強い能力を持つような世界とか……そういうのは、意味がないってことさ」
それを聞いて、俺は少し落ち込んだ。つまり、俺とは関係ない世界の構造を今から考えなければいけないというわけなのである。
「なんだよそれ……俺が作った世界なのに、干渉はできないのか?」
「できなくはないよ。僕達は神だからね。しようと思えばいくらでもできる。それがその世界にとって良いことかはわからないけどね」
あまり答えになっていないようなことを言ってウェスタはニッコリと微笑んだ。なんだかよくわからないが……とにかく世界を作ればいいらしい。
「……よし。ま、異世界っていえば、とりあえず中世風の世界観だよな」
「中世? 君が生きていた世界のヨーロッパのことかい?」
「ああ、そうだ。わかるのか?」
「なんとなく、だけどね。でも、あまりにも抽象的過ぎるよ。もっと詳しくしてくれるかな?」
「詳しく? そうだなぁ……あ! そうだ。魔法だよ! 異世界っていえば、剣と魔法のファンタジーだからなぁ」
俺は少しテンション高めにそう言った。対するウェスタは真剣そのもので頷いている。
「なるほど。魔法……他には?」
「魔法があるなら……魔物も必要だな。魔物がいるなら……魔王もいるな」
「魔王? 王様かい?」
「違う。世界征服を目論む敵だよ。そういうのいたほうが異世界っぽいじゃないか」
すると、ウェスタの顔つきが変わった。なんだか悲しそうな顔で俺を見る。
「な、なんだよ。その目は」
「あのねぇ、ニト君……言ったじゃないか。自分の都合で考えないで、って」
ウェスタはそう言って、大きくため息をついたのだった。