強欲な神父 1
そして、それから2、3日程歩き続けた後、イリアは足を止めた。
「ここだ」
目の前にあったのは、大きな教会だった。
教会とわかったのは、俺がよくヨーロッパの写真とかで見る、いわゆるイメージとしての教会だっただが……初めてこの世界に来た時見た教会……つまり、ウェスタ教の教会とは異なり、シンボルである炎の形を見ることはできなかった。
「ここに、人々から金銭を貪る悪魔の神父がいるそうだ。私はソイツに改宗を進めなければいけない」
「……へぇ。ずいぶんとあくどいヤツがいるもんだな」
俺がそう言うと、ムッとした顔でイリアは俺のことを見る。
「あくどい? フンッ。私にとっては、ニト教の信者は全員邪悪な神の崇拝者だ。あくどいなどという生易しい言葉では表現できない。神への冒涜者達だ」
そういってイリアは教会に進んでいく。
「……酷い言い様だな」
俺はウェスタにこっそり耳打ちする。
「それはそうだよ。彼女は物心ついた時からウェスタの聖女として教義を教えこまれたんだ。彼女にとってニト教は討ち滅ぼすべき敵……なんだろうけど、全然討ち滅ぼせてないよね」
馬鹿にしたように肩をすくめるウェスタ。神様のくせにイリアのことを本気では心配していないようである。
「おい! 私はウェスタの聖女イリアだ! ドアを開けろ!」
教会の大きなドアを乱暴に叩き、イリアは声を張り上げる。
すると、扉はゆっくりと左右に向かって開いた。
「おや……お客様でしたか」
霧の彼方から聞こえてくるような間延びした声……扉の向こうから出てきたのは、ダンディに顎鬚を蓄えた紳士だった。