色欲の館 9
あまりにもお決まりのセリフでさすがの俺も驚いてしまったが、しばらくしてから我に返る。
……って、いやいや。ダメだろ。さすがに童貞だからって先走ってはいけない。
ましてや、俺はこの世界の神なのだ。その創造主が、自身の非創造物のことを襲っちゃうのは……さすがに不味い気がする。
「……どうした、外道……さっさとやらないのか」
絶望しきった顔で、イリアは俺にそう言ってきた。
どうする……だけど、ウェスタはやってもいい感じのことを俺に言ってきてたし……
俺はベッドに近づいていく。俺が近づく度、イリアは恐怖で歪んだ表情を露わにする。
そして、ベッドのすぐ側まで来た時、俺はあることに気付いた。
イリアは目に涙を一杯貯めていた。
怖かったのだ。俺は、イリアに対し、恐怖の対象として見られていたのである。
「あ……え、えっと……や、やっぱり、いいや」
俺はそのまま慌てて扉のノブに手をかける。
「え……お、おい!」
イリアの呼声が背中から聞こえて来たが、俺は無視してそのまま娼館の廊下に飛び出してしまった。
……無理だ。あんな感じで泣きそうな女の子に対して無理やり……
確かに俺は引きこもりでクズでニートだった……でも、一線は超えちゃいけないってことだけはわかっている。
俺はそのまま娼館の出口へと向かうことにした。
「あれ? お客さん? もうお帰りですか~?」
受付の女の子が不思議そうに俺のことを見る。
俺はその視線が怖かった。
見るな……俺をそんな風に見るんじゃない。
そんなこともはっきりと言えず、俺はそのまま娼館を飛び出した。