色欲の館 6
「……よ、よし。行くか」
白いシャツに、黒いズボン……この世界の住民の格好としては、ジャージよりかは幾分か可笑しなものではなくなった。
「大丈夫だよ。そんなに緊張しないで」
どこからかウェスタの声が聞こえてくる。
さすがに、俺だけが周りの人間に見えるのに、見えないウェスタと会話するのは不味いということで、声だけで会話をすることにしたのだった。
俺は娼館の扉に手をかける。嫌な汗が手ににじみ出ていた。
そして、ゆっくりとそれを前に押した。
「いらっしゃいませ~」
と、先ほどの頭のゆるそうな受付の娼婦が、笑顔で俺のことを出迎えてくれた。
「あ……え、えっと……」
どうやら、俺の姿は完全に見えてしまっているらしい。
「はい~。誰をご指名しますかぁ~?」
「え、えっと……」
完全に言葉が出てこなかった。
それはそうだ。俺はながらくニート及び引きこもり生活を続けてきたのだ。
こんな異世界で、いきなり誰かと会話しろと言う方が難しいのである。
「誰もご指名はないんですかぁ~?」
「あ……な、ない……です……」
思わずそう言ってしまうと、不思議そうな顔で受付の女の子は俺を見た。
なんだか嫌な感じだった。そんな目で見られるのはすごく不快だった。
俺はこの世界の創造神なのに、どうしてこんな惨めな思いをしなければいけないのか……
「でしたらぁ~、今日入った新人さんでも、いいですかぁ~?」
「え……新人?」
「はい~。イリアちゃん、って言うんですよぉ~」
イリア……そうだ。イリアだ。
「は、はい! その子で!」
俺は食い気味にそういった。受付の女の子は驚いていたが、ニッコリと頷いた。
「わかりましたぁ~。代金は後でお支払い頂くので~、イリアちゃん、呼んできますねぇ~」
そういって受付の女の子は店の奥に入ってしまった。




