色欲の館 5
「ど、どうすんだよ!?」
俺は思わずウェスタにそう問い詰めた。
店の外に出た俺とウェスタ。イリアは、娼館の女主人の誘いにまんまと乗ってしまった。
「アイツ……このままじゃ自分がどうなるか、わかってんのか?」
「いや、たぶんわかってないね。イリアはそういう子だから」
「じゃあ、どうするんだよ? アイツが娼婦の真似事をして、マジでその……」
「貞操を失ってもいいのか、ってことかい?」
ウェスタもどうやら、俺と同じ心配をしているようだった。
「あ、ああ……どうにかならないのか?」
「うーん……まぁ、僕達は神様だからね。なんとかならないこともない」
「そ、そうか……で、どうすればいいんだ?」
俺がそう訊ねると、ウェスタはなぜか俺の方を見た。
「な、なんだよ。俺のことを見て」
「いや、だから、ニト君。君だよ。君が、イリアのお客さんになればいいんだ」
「……へ? え、ちょ……はぁ?」
俺は思わずウェスタにそう聞き返してしまった。しかし、なぜかウェスタは満面の笑みで俺の方に顔を向ける。
「だから、ね? 君がイリアのお客になるんだ。そうすれば安心だろ?」
「はぁ!? ふ、ふざけんなよ! 俺がその……この娼館に入るってことかよ……」
「そうだよ。お客としてね。大丈夫。君はこの世界の創造主なんだ。1人の女の子をキズモノにするくらい、問題ないじゃないか」
「お、お前なぁ……」
ウェスタは簡単に言うが、俺は、もちろんのこと元いた世界でそんな経験はしたことないし、ましてやこういうお店に行ったこともない。
つまり、このままだと俺は、自分の作った世界の女の子で初体験をするということになる。
「……っていうか、不味いんじゃないのか? ウェスタの聖女ってのは処女じゃなきゃいけないんだろ?」
「あはは。そんなの、検査するわけじゃないからわからないよ。巡礼の度でキズモノになったくらいで、聖女としての資格を失うわけじゃないさ」
「そ、そうなのか……」
ウェスタはまるで人事のように、軽い感じで俺にそう言った。
「まぁ、ニト君に任せるよ。変なお客に乱暴されるよりはずっとマシなはずだからね」
乱暴という言葉を聞いて、俺も確かにそうだと思った。少なくとも俺は乱暴はしないはずだ。イリアの嫌がることもしない。
しかし、想像するとなんだか緊張してきてしまった。金色の美しい髪に白い肌……
「ほら。ニト君。さっさと行ってきなよ」
「え……あ。でも、俺達の姿ってそもそも人間には見えないんじゃ……」
「大丈夫だよ。見せたいと思えば見せれる。神だからね。ああ、でも、その格好で行くのは世界観的に不味いかな」
ウェスタにそう言われて俺は、自分がずっと部屋にいた時のジャージ姿であることに気付いたのだった。




