表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/100

色欲の館 3

「……しかし、どんなヤツが出てくるんだろうな」


 俺はウェスタにそう話しかけてみた。


「うーん……まぁ、この娼館の主人だからね。それなりにやり手の女の人が出てくるんじゃない?」


「やり手……こんな商売でよくもまぁ、ここまで儲けるよなぁ」


「こんな商売って……別に立派じゃないか。こうでもしなきゃ、この世界では女性は上手くいきていけない状況なんだよ」


「え……それって、どういう――」


 俺がウェスタの言葉が気になって、そこまで聞いた丁度その時だった。


「お待たせしたわね。アナタが、聖女様?」


 と、店の奥から声が聞こえて来た。俺とウェスタ、そして、イリアはそちらを向く。


「え……コイツが、主人?」


 俺は思わずそう呟いてしまった。


 ソイツは、おおよそ娼婦には見えなかった。


 パイプを口に咥え、露出度の高いベールのような服を着ている点は娼婦としてはそれっぽい。


 だけど、その顔には大きな傷があった。


 そして、何より左腕が無いのだ。右腕で持ったパイプを口に咥える。


 どこか威圧感がある女は、パイプから大きく煙を吐き出し、イリアを見る。


「聖女様。はじめまして。私、この娼館の女主人、ディアナと言います。よろしく」


「あ、ああ……私はイリア。ウェスタの聖女だ。今は巡礼の旅の最中なのだが……ああ、そうだ。お前はニト教を信仰しているそうだな?」


「え? ああ、そうね……まぁ、信奉しているってことになるのかしらね?」


 パイプを口にくわえるとヘラヘラと笑いながら女主人はそう言った。


「ならば、今すぐその信仰を捨てろ。改宗するのだ。そうすれば、女神ウェスタのご加護がお前にも約束される」


 と、イリアのその言葉を訊くと、女主人は呆然としていた。


 そして、しばらくしてからパイプを咥え、煙を吐き出す。


「そうねぇ……別にいいわよ」


 あっさりとした返事だった。イリアもそれは予想外だったらしく、ポカンとしている。


「そ……そうか。ならば、まず、この娼館は閉鎖しろ。性欲に従って行動することはウェスタ教では禁止されているからな」


「……あら、聖女様。なんの条件もなく、というわけにはいかないわよ」


 と、油断していたイリアに、女主人の鋭い言葉が突き刺さる。


「条件? な、なんだそれは」


「フフッ。簡単なことよ。この娼館で働いている女の子なら誰でもやっていることだわ。それを、聖女様に一回だけ体験してもらうの。それさえやってくれれば、喜んでこの娼館を閉鎖して、ウェスタ教に改宗するわ」


 イリアは当初、それがどういう意味かわかっていないようだったが、すぐにその顔は酷く歪んだのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ