色欲の館 2
娼館はカロンの街のかなり端の方に存在していた。それが位置する場所は、周辺は薄暗く、イリアもひどく警戒しているようだった。
そして、娼館についてみると、イリアは目を丸くしてそれを見上げていた。
「……デカイな」
俺も思わずそう言ってしまった。確かに、まるで貴族の屋敷のような娼館は巨大であった。
「そりゃあ、儲かる商売だからね」
「……そうだろうな。で、イリアのヤツ、どうする気なんだ?」
俺とウェスタが心配そうに眺めている前で、イリアはそのまま娼館の扉を開けて中に入ってしまったのである。
「え……アイツ……大丈夫かよ!?」
「うん……僕達も入ろうか」
「はぁ? こ、こんな所……だ、ダメだろ、入っちゃ……」
俺がそう言うと、ウェスタはキョトンとした顔で俺を見る。
「なんだい? ニト君、もしかしてこういうお店、始めてかい?」
「あ、当たり前だろ! こ、こんな……」
「あはは。何を言っているんだい。僕達は神様なんだから、堂々としていればいいんだよ」
そういって半ば引きずられるような形で、俺はウェスタに娼館の中に連れ込まれてしまった。
娼館の中は、どこか甘ったるい匂いが立ち込めた異様な雰囲気だった。
「……あ、イリアだ」
イリアもその光景に少し戸惑っているらしく、受付らしい場所の前で立ち止まったままだった。
もちろん、俺も同様の状態だったのだけれど。
「え、えっと……どうするんだ?」
「さぁ? イリア次第だね」
ウェスタはまったく動じる様子はない。神様だから、っていうことなだろうが、少し変わったやつである。
と、しばらくしてからイリアはハッと我に返ったようで、そのまま受付の方に向かっていった。
「おい! ここはカロン娼館だな?」
「え? あ、はい~。そうですよぉ?」
受付の女の子は、いかにも娼婦らしい、胸元が大きく開いた薄いドレスを着た可愛らしい喋り方をする女の子だった。
「私はウェスタの聖女、イリアだ。女神ウェスタの教えをここの背徳者に授けにきた。責任者を出せ」
勢いにまかせてイリアはそう捲し立てる。なんとなくだが、イリア自身も余裕がないように見えた。
「うーん……わかりましたぁ。ちょっと待っていてくださいねぇ」
そういって女の子は立ち上がって店の奥の方に入っていったのだった。