色欲の館 1
そして、イリアは程なくして街に辿り着いた。
その街は、先ほどのリンボ村よりも大分賑やかな場所で、邪教を崇める場所って感じはしなかった。
「ここでも、ニト教が信仰されているのか?」
俺は思わずウェスタにそう訊ねる。
「そうだね。でも、巡礼地はこの街全体のことじゃない。この街にある、一つの施設に対して、イリアは巡礼を行なわなければならないんだ」
そうこうしている間に、イリアは道行く人に声をかけた。
「すまない。ここはカロンの街であっているんだよな?」
「え? ああ。そうだけど?」
「では、カロン娼館はどこにあるんだ?」
声をかけられた人はキョトンとした顔をしたが、特に動じることもなく、そのまま指をさして、イリアに道を説明した。
「ありがとう。アナタに女神ウェスタのご加護があらんことを」
笑顔でそういって分かれるイリア。
「……カロン……しょうかん?」
「娼館。つまり……娼婦がたくさんいる施設のことだね」
「え……娼婦!?」
さすがに俺は慌ててしまった。しかし、ウェスタは俺の顔をまっすぐに見てくる。
「ああ。童貞のニト君には衝撃的な事実かもしれないね。でも、そういう施設は別に君の世界にもあっただろう?」
「そ、それは……でも……」
「いいじゃないか。人間だって動物なんだ。普通の行為だよ」
「……もしかして、イリアはそれを咎めようっていうんじゃないだろうな?」
「うーん……ウェスタ教の教義では、淫らな行いは控えよ、って教えがあるからね。まぁ、たぶんそうなんじゃないかな?」
まるで他人ごとのような様子で、ウェスタはそう言った。俺はさすがにどうにも同様してしまっていた。
娼館……中世ファンタジーっぽい感じはあるし、あってもおかしくはないと思うのだが……
「ほら、イリアが行っちゃうよ。ついていこう」
俺の気持ちも知らないで、ウェスタはイリアを追って歩き出した。仕方なく、俺もそれに同行するのであった。




