突然の異世界転生 2
「ほら。いつまで寝ているの? 起きてよ」
「……ん?」
突如として聞こえて来た声に反応し、俺はゆっくりと眼を開く。
「やっと起きた……まったく。このままずっと寝ているのかと思ったよ?」
目の前には……女の子がいた。
小麦色の肌に真っ白な髪、そして、真っ赤に燃える炎のような紅の瞳……おおよそ、日本人ではないようである。
また、身体のラインがはっきりと分かる黒いセーターのような服を着ている。そのわりには、女の子の体つきはあまり豊満であるとは言えなかった。
とにかく、どう見ても外国人みたいであるが……不思議な感じの女の子がそこにいたのだ。
「え……あ、あれ? ここは?」
俺が訊ねると、女の子は嬉しそうにニッコリと微笑んだ。
「ここは、君の世界だよ」
「……はぁ?」
俺は辺りを見回してみる。
真っ暗な空間が、どこまでも続いている……ここは一体どこなのか?
「え、えっと……君は……」
「僕の名前はウェスタ。よろしくね」
可愛く微笑む少女。しかし、今の俺には女の子の可愛さを見とれている暇はない。
「ウェスタ……えっと、君、俺っていつからここで倒れたかわかる?」
「いつ? ついさっきさ。君が机の角に頭をぶつけて間抜けに死んでからまだ十分も経ってないよ」
え……死んだ?
俺は女の子の言葉を頭の中で反芻した。
死んだ……俺は、死んだっていうのか?
「え……ちょ、ちょっと待って。死んだ? 俺……死んだの?」
「うん。死んだよ。死んで、君はこの世界の創造主に生まれ変わったんだ」
「生まれ……変わった?」
状況がまったくわからなかった。俺は、一体どうなってしまったのか?
「え……ちょ、ちょっと待てよ。どういうことか、ちゃんと説明してくれよ」
「説明……今言ったのが全てだよ? 自分が死んだことが信じられないのはわかるけど、早めに現実は受け入れた方がいい。自分の頬をつねってみなよ。痛いだろ?」
言われたとおりに俺は頬をつねる。痛い。
これは……どうやら現実らしい。
「……わかった。百歩譲って仮に、俺は死んだってことにしてやろう。で、お前は誰なんだ?」
無論、死んだなんて事実は受け入れられなかった。だが、ウェスタからどうしても詳しい話を聞き出す必要があると思ったのである。
「お前……? 失礼だな。僕はウェスタ、って言っただろ? この世界の神さ」
「……神? この世界って……え?」
俺が混乱しているのが見てわかったのか、ウェスタは慌てて補足をする。
「正確に言えば、君の住んでいた世界ではない。この世界……つまり、これから君が創造する世界の神なのさ」