暴食の村 4
「この家のどこかって……いないじゃないか」
俺がそう言うと、ウェスタは村長の家の中を歩き始めた。
「お、おい……どうしたんだよ」
「……この家、なんかおかしいよね」
そういってウェスタはなぜか床にピッタリと耳をくっつけた。
「……下に空間がある」
「え? それって……地下室か?」
「たぶんね。さて、入り口は……」
そういってまたしてもウェスタは家の中を歩き回る。すると、一点で立ち止まって、そこから動かなくなった。
「……たぶん、ここだ」
「え? そうなのか?」
そういってウェスタはトントンと床を叩く。
「他の床と明らかに音が違う……あ」
と、ウェスタは床の端になにやら穴が開いているのを見つけた。
「ニト君。ここ、引っ張ってみて」
「え……うおっ!?」
俺が穴を持ち上げるように引っ張ると、そのまま床がはずれ、その先に階段が見えるようになった。
「マジかよ……こんな所に」
「この階段が地下室につながっているはずだ。行こう」
ウェスタは躊躇うこと無く階段を進んでいく。俺も仕方なくウェスタの背後をついていくことにした。
階段自体はそれほど長いものではなかった。しばらく歩いて行くと、開けた場所にたどり着く。
「……ここ、なんだ?」
「さぁ……おそらく、昔の時代の牢獄か何かだと思うな。その上に村長は家を建てていて、それを利用していた、と」
周囲を見てみると、確かに鉄格子で隔たれた部屋が何個も存在している。どことなく血生臭い嫌な匂いがするが、気のせいであってほしかった。
「で、イリアはどこにいるんだよ?」
「そうだね……あ」
と、部屋を見ながら歩いているその時だった。
鉄格子の部屋の中に一人の金髪の少女が閉じこまられている。
「女神ウェスタよ……どうか、哀れな私をお救い下さい……」
そして、その少女は、ランタンの炎に向かって手を合わせ、なにやら祈りを唱えているようだった。




